小説

□空腹の夜
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※過激な性描写がありますので、苦手な方や18歳未満の方は閲覧をお控え下さい。





般若党頭首である赤城烈斗という男は、熱い男である。
彼ほどに弱音や泣き言が似合わない者は、少なくとも般若党内にはいないだろう。
それほど赤城は心身共に強靭な男だ。
しかし、そんな彼も建て前や外面を全て捨て去って、弱い心をさらけ出す瞬間がある。
それは竹馬の友であり般若党の副将である小暮迅雷と過ごす時間であった。

「さすがに今日は疲れたな」
「…ああ」

赤城が普段決して漏らすことのない小言。
それかに対し、近くに佇んでいる小暮は頷いて同意の意を示すのみ。
そしてしばらくして小暮が沈黙を破った。

「…飯は?」
「いらん」
「食わんと精がつかんぞ」
「腹が減っていないんだ」

そう言って赤城は床に寝転んだ。
頑なに食事をとることを拒否する赤城に、小暮は困ったように眉を寄せた。

「…明日もやらねばならないことがたくさんある。食え」
「フン、そこまで言うなら」

そう言って赤城は上体を起こす。
小暮はやれやれ一安心、と息を吐いた。しかしその直後、彼は赤城にグイッと腕を引っ張られた。
それが相当強い力だったので、小暮はよろめいて赤城の近くに倒れ込む形になった。

「何をする」
「食うんだよ、お前をな」

赤城の口元には笑みが浮かんでいる。
対する小暮は呆れ顔だった。

「…今日は疲れているんだろ」
「だからお前に癒やしてもらいたいんだよ」
「………」
「いいだろ?小暮」

さてどうしたものか…と小暮は考えた。
正直に言うと今日は自分も疲れていて、そういう気分ではない。
明日に備えて食事を取り、すぐにでも床につきたいというのが本心だった。
しかしそれを包み隠さず言うのはまずいだろう。
だがそうなると、どう理由をつけて断るべきか?
上手い言葉がなかなか浮かんでこない。小暮迅雷という男は自他共に認める口下手な男である。

「………」
「何も言わんということは同意したということだな?」
「いや…待て」
「なんだ、嫌なのか?」

小暮は困惑した。
そうハッキリ聞かれてしまうと、自分も白か黒かで答えなければならないという訳で…。

「小暮…嫌なら嫌と言ってくれ」
「赤城…」

先程まで押しの強かった赤城が自信のない表情をみせた。
悲しいような、寂しそうな。
そんな顔を見せられては、赤城の言いなりになる他ない。
つくづく自分は赤城に弱いな、と小暮は思った。

「わかった。お前の言う通りにしよう」

その言葉を聞いた赤城は、先ほどの弱々しい表情とは打って変わって、瞳をギラギラ輝かせた。
そして勢いよく小暮に覆い被さった。
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