捧げ物&頂き物

□最強兄貴と最強彼氏!!
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「う〜ん・・・・・どうしよ・・・・・」


とある休日の昼時、多くの人々で賑わうシティの街中を未月は困り顔で歩いていた。
人見知りな彼女は人混みの中を一人で歩くことは好きではない。
だが、彼女は「いろいろと」訳ありな身。一人で出歩く時は人が多い所を歩くようにしなければならなかった。
その時は速足でさっさと通ってしまうものだが、今回は遅い。
しかも何やら手帳とにらめっこをしている。



「月謝がそのまま月の収入になるんだし・・・・・もう少し増やせたらいいんだけど・・・・・あぁもうっ!!私の意気地無しっ!!」


どうやら収入のことで悩んでいたらしい。
サテライト時代にその辺にあった本を片っ端から読んだり、兄同然の流矢に分からなかった所を聞いたりしていた未月にシティの学生に教えることができる知識は十分に備わっていたため、家庭教師をしている。

だが、家庭教師は人付き合いが多い仕事だ。
人見知りな未月には辛い仕事ではあるが、人付き合いを避けているようでは仕事など出来ない。
ということで、仲間であり学生でもあるアキや龍亞、龍可に紹介してもらった人限定で教えている。
これがまた分かりやすいと評判で、口コミでもそれなりに広がっており、生徒を増やそうと思えばいくらでもできるが、彼女にはそれが出来ない。

「今更この性格が仇になる日が来るなんて・・・・・。クロウにも申し訳ないし・・・・・。」

配達業をしている同居人のクロウは、ストレスになるかもしれないから無理するなと言う。
その時はそのまま押し切られた為甘えることにしたが、やはり少しでも仲間の負担を軽くしたい。
・・・・・というか早い話、何をやっても長続きしないあのニート状態となっているあいつが働いてくれればいいだけの話なのだが。

「小等部の子相手ならいけるかな・・・・・とりあえず龍亞か龍可に聞いてみ・・・・・・・・・・Σきゃっ!!」

手帳ばかりを見て前を全く前を見てなかった未月は前から歩いて来る通行人に気づかず、そのままぶつかって尻餅をついてしまった。


「よそ見をしていてすまない・・・・・大丈夫か?」

「あ・・・・・こっちこそ全然前見てなくて・・・・・・・・・・あれ?」


差し出された手を素直に受けとって立ち上がる。
そしてぶつかった張本人を見た途端、未月は目を見開いた。

そこにいたのは・・・・・

「・・・・・遊星?」

「何?」


自分が最も信頼を置く幼なじみがそこにいた。
だが、彼の様子はどうもおかしい。
自分を見ているのに彼は無反応。
まるで初めて出会ったかのような反応なのだ。


「君は俺を知っているのか?」

「・・・・・え??」


次は未月が混乱する番だった。

実はこの遊星、以前この世界に来た異世界の住人、カリアとフィーネがいる世界の遊星なのだが、未月がそれを想像できるはずもない。彼女は二人が異世界の住人とは知らないのだから。


「(困ったな・・・・・)」


遊星も困っていた。

ここが異世界だということは分かっていた。

フィーネが次元を行き来する装置を完成させ、その装置の効果に巻き込まれて自分は今ここにいるのだ。
カリアとフィーネに合流するにはこの世界のガレージに向かうのがてっとり早いと踏んだのだが、この世界の自分の仲間に出会ってしまった。
この少女に怪しまれてしまえば、ガレージには行きにくくなる。


「(あ、スターダスト・・・・・。)」


一方、未月は遊星のデッキからスターダストの気配を感じ取っていた。
コピーカードや偽物というわけではないようだ。


「・・・・・とりあえず、ここに突っ立ってても仕方ないしガレージに帰ろっか?」

「・・・・・いいのか?」


安心したと同時に、驚いた。

自分は何も事情を話していない。
なのに彼女は疑いなくガレージへ促した。


「うん。
だってスターダストが本物なんだもん。
疑いようがないよ。」

「っ!?」

「フフッ。驚いた?」


いたずらっぽい笑みを浮かべ、未月が言う。

カードの精霊の気配を感じ取るのはもはや慣れっこだが、こんな時は便利だと改めて思う。


「ま、このことに関してはガレージに着いてから、ね。
私は五十嵐未月だよ。」

「俺は・・・・・って名乗るまでもないか。」

「不動遊星でしょ?やっぱ一緒だよね。」

「だろうな・・・・・よろしく、未月。」

「こちらこそ。」


そして二人はガレージに向けて歩き出した。

この時、二人は気がついていなかった。

後方から二人をつける影があったことに・・・・・。



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