SS未満・中途半端・過去お礼文置き場


はずかしいふたり


「イマイイマイ〜」

残暑が厳しい今日この頃、今井さんに恋人が出来た。
背が高くて、情に厚くて、男気溢れる、黒髪美人だ。てゆーか男だ。
俺等の地元じゃ超有名人。軟葉高校のツートップの片割れ。名を伊藤真司。
泣く子も黙る金髪の悪魔の相棒。

その伊藤が満面の笑顔で手を振りながら駆け寄ってくる。
今井さんも掛けていた公園のベンチからすっくと立ち上がり、伊藤を迎えるべく走り出した。
二人の走る速度から、もしやこんな公衆の面前で抱き合っちゃったりするんだろうかと危ぶんだが、少女漫画よろしく頬を朱に染め、ぎりぎりのところで共に急停止した。

「いっ、イマイ、ごめん、待った?」

息を切らして伊藤が問う。膝に手を付き、上目使いで。
うっすら汗をかき、寄せた眉根は苦しそうで。全力疾走したのだろう事を窺わせる。
まあ。だからなんだと、俺は言いたい。
あの伊藤を使いっ走りにさせてこの状況ならそれはそれはさぞ爽快感もあろうもんだが、互いに目をうるうるさせて頬を紅潮させ、見つめ合ってるのは違うと思う。

「馬鹿だな伊藤、お前を待ってる時間なんて楽しくてあっという間だ。それに顔見たら嬉しくてぶっ飛んじまうよ」

――絶っ対間違ってる。

「…イマイ…」

「イトー…」

間違ってる挙げ句、長い。見つめ合い過ぎだ。
……俺そろそろ帰ろうかな。

「あの、今井さ…」

「あっ、そうだイマイ!俺言ったじゃん、名前で呼べって!なんでまだ名字なんだよ!」

「…あっ、悪いイト…じゃなくて、しっ、し、真司!……つうかお前は?お前は俺のコト名前で呼んでくんねーの!?」

「えっ!……そっか、そうだよな…じゃ、じゃあ、いま、ま、マイマイ!」

「それ名前じゃないだろー!…………あれ?もしかして俺の名前、わかんない…?」

「…………」

「し、真司くん?」

「………なんて、うっそ。わかるよ、勝俊」

「真司〜」

帰ろう。
これ以上こんな暑い場所であんなモノ見せられたらたまったもんじゃない。
精神衛生上とてつもなくよろしくない。つーか脳ミソ溶けて鼻から出てるかもしれない、俺。

ドン。

なにかにぶつかった。
今井さんには及ばないが、結構デカくてそして金髪だ。
三橋か。

「よう谷川、アイツ等すげぇよな。自分達がどんだけ恥ずかしいか気付いてないんだ、ケラケラケラ。アイス奢って。」



その後俺は三橋と共に二人を置いて公園を去り(…二人は俺が居たことなど分かっていなかったと思うが。)、三橋にアイスを三本とかき氷二杯を奢らされ、二人の恥ずかしい現場の話を散々聞かされた。別れ際、喋って喉が乾いたからと、ラムネ二本も買わされた。

そして家に着いたら今井さんから電話がかかってきて、出たら伊藤の話を延々と聞かされた。

伊藤は可愛い、すぐ赤くなる。
今日は手を繋いだ。
離したくなかった。
ちゅうはまだ早いって。
でも無理矢理するフリしたら目ぇぎゅっとつぶってすげぇ可愛かった。
しっ、しなかったからな!
明日は会えないけど、土日は会えるって。
どこに行こうかな。
谷川、お前も来るか?

「遠慮しときます。」

そこで電話は一方的に切った。

―――――疲れた……。

ケラケラケラケラ…
耳に残る三橋の笑い声に、アイツみたいに心底楽しめたら人生って楽しい事ばっかりだろうな、ほんと最強だよなと溜め息をついた。


おわり


今井と伊藤が付き合ったら、ベタでクサくて見てて大層面白いといいなぁと思って書きました。
サブタイトル(むしろメイン?)は谷川の受難。まんま。

それでも今井さんに着いて行くっス!

拍手お礼文でした(^^)


ぼくははじめて、おぼえている限りはじめて、ひとの手をにぎりたいと、そう思いました。

いっしょにここにいて欲しいと、そう、願ったのです。

ぼくの手は、ひとを拒絶するために使うものだと思っていました。
拒絶し、はねのけ、たたきつける。つまり殴り、殴り、殴り、相手の存在を否定する。


あなたの手は強かった。


ぼくの手とは違った。


おなじ手なのになぜだろう?

あなたの手はぼくを否定しない。
おなじ、殴るという行為をしているというのに。

あなたの手はあたたかい。
拳があたった場所はたしかに痛みを訴えているというのに。


ぼくを許容してくれるあなたの手。


あなたの手をにぎったら、ぼくの世界はきっと変わりそうな気がして。


あなたの手を、にぎりしめてもいいですか?

いますぐ、走っていってもいいですか?


あなただけにできること


ポエミー(笑)ちょっと恥ずかしい(〇>_<)


「俺、三橋と寝たよ」

挑むように俺をにらみ付けながら伊藤が言った。

いきなり何を言うのかと訝る。つい何日か前、俺たちは想いを告げ合ったばかりではなかったか。質の悪い冗談か。

「あ?」

返す声は知らず険を含んだ。
動じない黒い瞳を負けじとにらむ。絡まる視線に冷たいものと熱が入り混じった。

「今なんつった?」

伊藤の瞳の奥がゆらりと揺れた。目を細め、唇を歪めて笑う。

「ごめんね、俺尻軽なんだ。三橋が、好きって言うから、した。それだけ」

「…………」

は?

「でも勘違いしないで。俺、中野が好きなんだ」

「……なに」

何を言っているのだろう。
意味が解らない。言われた事の半分も理解出来ない。
―――あいつが伊藤の事を好きって言ったからする?
俺の事が好きだって言ってるのに?
勘違いするな?
俺がおかしいのか?

「中野とする前に三橋としちゃった。怒る?」

「………!!」

長ランの襟元を力任せにひっぱった。二、三個ボタンが弾け跳ぶ。はだけて覗いた胸元には鮮やかな鬱血がそこかしこに散らばっている。
見たくなどないが視線はその赤に引き寄せられてしまう。他人が刻んだ所有印。伊藤が体を与えた証拠。

「痕は付けるなって、言ったんだけど。ホントは中野にバラすつもりじゃなかったんだ。三橋がこんなことしなきゃ、上手く隠せると思ったんだけどなあ」

悪びれもせずにぬけぬけと言う。
混乱した。
今、自分の中で渦巻くこの感情がなんなのか解らない。知らない何かが頭の内で暴れまわる。
ただの嫉妬や怒りではない何か。

「……そういう、ことじゃねぇだろ」

やっと声を絞り出す。ガサガサと耳障りな自分の声に内心驚きながら、伊藤の視線を額の辺りで感じる。

「そういうことって、何に対して?三橋としたこと?隠そうとしたこと?両方?」

「……………」

「俺が気にくわない?……でも俺、こういう人間なんだ。好きって言われたら、俺も好きかもって思っちゃう。京ちゃんだってすごく可愛いと思う」

でも俺、男相手じゃないと勃たないけど。
くくっと喉を鳴らして伊藤が笑ったのが判った。妙な音だった。ひきつった様な高い音。

「……ねえ、中野」

顔を上げない俺の両頬を伊藤の手が包む。

「俺の事、嫌いになった?」

ひんやりと冷たい手に力が込められ無理矢理上を向かされる。
伊藤はどんな顔をしているんだろう。
面白がって笑っているのか、なんの反応も示さない俺をつまらないものでも見るような顔をしているのか。
一秒にも満たない僅かな時間でそんなことを考えた。
見上げた伊藤はとても綺麗な顔をしていた。愛おしそうに俺を覗きこむ切れ長の眼。
なかの、自分の名前を呼ぶ唇の動きがひどく緩慢に目に映った。

「お願い、嫌いにならないで」

囁いて、そのまま薄い唇が俺のそれを塞ぐ。伸ばされた舌がそっと唇をなぞっていく。
曖昧な刺激が体中に広がっていくのを感じる。頬にあった両手が耳に移動して薄い皮膚をなぞる。伊藤の手が擦れて立てる乾いた音に背筋が粟立った。

「なかの、すき。」

「…………っ」

何度か撫でられただけで過敏になってしまった耳が伊藤の声の振動を甘く全身に伝える。
俺の好きな、伊藤の声。
その声が俺を好きだと言う。
痺れに似た疼きが脊髄を駆け上って脳味噌を揺らす。

「すきだよ。ごめんね、もうしないから」

耳から移った片方の手がゆるゆるとネクタイの結び目をいじる。
俺はどんな顔をしているんだろう。頭の中はぐちゃぐちゃだ。驚愕、疑問、嫉妬、快感、怒り……そして欲情。そう、俺は欲情してる。
伊藤の手に、声に、目にも表情にもその動作一つ一つ、それが起こす振動にまで。
伊藤が薄い涙の膜をはりつかせた瞳で俺を見ている。右手は未だ耳元で遊んでいて、左手はネクタイに置かれている。
置かれた手の指は結び目をほどく意思があるのかないのか、生地の触感でも確かめるかのように上下にさまよう。
伊藤はなにがしたいのだろう。
俺の事を試しているのか。

………未完成(--;)
酷いイトーちゃんに翻弄されて、ゾクゾクしちゃう中野クン(攻)を書きたかった。力不足…。



[TOPへ]
[カスタマイズ]




©フォレストページ