今日俺パラレル部屋

□何よりも空に近い子供たち
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何よりも空に近い子供たち





「三橋には近寄るなよ」

天然パーマの赤毛が紫煙と共に吐き出した台詞に伊藤は笑った。

「なにそれ。ミツハシセンセーいい人じゃん。中野は嫌いなの?」

「嫌い」

「なんで」

「……」

こいつはなんにも判っちゃいない。
根本近くまで吸った煙草を投げ捨て足で踏み潰す。一緒にムカツク金髪野郎も細切れにしてやった。
心の中で。

イライラと次の一本を取り出した中野の目の前にひらりと手が差し出された。

「一口チョーダイ」

「…一本」

「一口でいいの」

ザァと風が吹いて校舎の周りの木々が揺れた。その風は屋上を走り伊藤の長めの黒髪も揺らしてゆく。合間からのぞく双眸と唇は緩やかに笑みの形を作っている。

「てゆうか、一口がイイ、かな?」

「―――クソッ」

そういう顔して笑ってんじゃねぇよ。

苛立ちに任せて口付けた。
誘い込む様に開かれた唇の間に中野の舌はなんなく入り込み、薄い舌を絡めとる。
潤んだ伊藤の目尻は赤くて、今絡み合ってるこの舌もきっと赤いのだろうと思うと中野の脳味噌は高潮した。

もたれ掛かっているフェンスに背中を擦り付けて伊藤がずるずると落ちていく。
二の腕にしがみついてくる両手が愛しいと中野は思った。





「……まだ一口、吸いたいか?」

思う存分口内をまさぐった舌で上唇を舐め上げながら中野は訊く。その舌を追いかけるように伸びる伊藤の舌はやはり赤い。

「いまは、やめとく。…授業がおわったら、」

――部屋に帰ろう。





始業五分前、くゆる煙をぼんやり眺めて伊藤が言った。

俺たちきっと、あの煙より高いトコまでいけるよ。



end

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