今日俺

□ぱぱぱんつ!
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なんでだ、何でパンツはいてないんだ。一体なにが起こったんだ。
俺は変態じゃない、正常なんだ。

だっ、誰か、誰か助けてくれ!
俺、どうしよう。



ぱぱぱんつ!



俺は女のパンツをのぞく正常な人間のはずだっだ。谷川がそう言っていた。
断じて男のパンツなどのぞかない。仮に見たとしても何とも思わない。感じない。それが普通だ。谷川に言われなくともわかる。
それが、なんで!
なんでパンツ見て興奮してそれだけでは飽き足らずパンツ脱がしてしまったんだろう。
いっ、イトーのあの目が忘れられない。
始まりはなんだったっけ。
……あぁそうだ、色とりどりのパンツ。これだ。パンツが欲しかったんだ。
最近は男も勝負パンツをはくらしい。
俺は常に人生に勝負を挑む人間だから勝負パンツを手に入れるべきだと思ったのだ。母ちゃんが買ってくる、親父や弟達と色違いのトランクスとはおさらばだ。俺は俺の為の、俺が選んだ俺のパンツが欲しいんだ。



「今井ー、パンツ届いた?」

そう声がしたと思ったら、部屋の戸が勢いよく開いた。トゲ頭に長ラン姿のいつもと変わらぬ伊藤がそこにいた。しかし大体セットで見かけるイケ好かない金髪の姿は伊藤の前にも後ろにも横にもいなかった。

「届いた……あのヤローは?」

「ああ、ミツハシ?理子ちゃんトコに行った。腹空いたんじゃねーの?」

「なにっ!?あんにゃろー、軽々しく理子さん家に出入りしやがって」

「…お前こそ谷川は?」

「急用ができた」

「ふーん、めずらしい。…あ、パンツこれ?」

そう言って伊藤は大手通信販売会社のロゴが入った段ボールの前にしゃがみこむ。開封の如何を問う声に、「どうぞ」と答えながら俺も段ボールに近付く。

「ごたいめーん」

非常に楽しげな声を出して伊藤は蓋部分を開け広げた。

「「――おおっ…!」」

思わずもれた感嘆の声がはもった。パンツパンツパンツ、個別包装された色とりどりのパンツが段ボールの中から己を手に取れと訴えかけてくる。さすが勝負パンツ。

「こりゃすげー。ほら今井、はやくはやく」

伊藤にうながされ一番目に付くド派手な蛍光色のパンツを手に取る。ガサガサ音を立てて中身を取り出し広げる。蛍光ピンクの生地に銀ラメプリントがしてあるボクサータイプのパンツ。

―――素晴らしい!

今までの、母ちゃんが購買後、サイズ順に選り分けられ自動的にタンスにインされるパンツとは全然違った。
俺のパンツ。
感激して涙が出そうだ。

「……伊藤、俺のパンツだ……!」

パンツを握り締め打ち震える俺に、こくこく頷きながら伊藤が拍手をくれた。

「よかったな、今井。さー、どんどんいこうぜ!」

赤、黄色、黒。ストライプ、水玉、チェック。トランクス、ボクサー、ビキニ…は一瞬びびったが、まあアリか。
おそらく三橋が面白がって注文したのだろうが、俺は肉体美に自信がある。ビキニくらいはきこなしてやろうじゃないか。
ふふんと、理子さんの家に居るであろう憎たらしい金髪の顔を思い浮かべ、鼻で笑ってやった。

「イマイイマイ、すりーでぃー!」

伊藤がいきなり大きな声を出した。
すりーでぃー?なんのことだ?もしかして3D?
なんて考えながら伊藤が手にするパンツを見る。ぱっと見、普通のパンツだったが一部分だけが特徴的な形をしていた。
ずばり説明すると、普通のパンツにチンコをいれる袋状の布が付いているのだ。まさに3D。

「…すりーでぃーだ…」

「な、な、だろ?……えっと、3D…べすとぽじしょん…ベスポジ!ベスポジなんだってよ!今井!」

伊藤は包装してあった袋の説明書きを読んで、嬉しそうに報告してくる。こんな頭してるくせに意外に好奇心旺盛で柔軟性があるらしい。
しかし俺はなんかその形状がなんというか生理的に受けつけない。ベスポジとかいう前に見栄っ張りにしか見えない。あまりこれ見よがしに飛び出してしまってはいかんだろう。

「……俺の好みじゃないんだが……」

「なーなー、今井。ほんとにベスポジかどうか試してみろよー」

聞いてない。
興味津々といった感じで伊藤は、3Dパンツを両手で持ち広げ、俺の鼻っ面に押し付けてきた。眼前にぶら下がる飛び出す布地にげんなりする。

「だから俺、このパンツあんまり…」

「いいから今井!早く早く!……手伝うか?」

……どうにも着用せねば伊藤の気は収まらないらしい。
手伝われても困るのでイトウの手からパンツをもぎ取る。でも手にして改めて眺め、溜め息をつきたくなった。

「……今井。チンコ右とか左に寄せなくてもいいんだぞ。ちんポジ気にしなくっていいんだ。喧嘩売ってきた輩にいつでも応戦できるんだぜ、これぞ勝負パンツ!」

―――なるほど。一理なくもないような気がする。確かにちんポジ気になる時に買った喧嘩は散々だった。喧嘩中にちんポジ直す訳にもいかん。

「…わかった」

むりやり納得させられた感もないではなかったが、まぁ今ちょっと3Dパンツはくくらい別にどうってことない。

「じゃあ俺ドアんトコで待ってる」

にこやかに伊藤が退場して行く。
その後ろ姿を見てやっぱりハァと溜め息が出てしまった。



「………おぉっ、これは…!」

はき心地は、意外に良かった。
確かにこれはちんポジが気にならないかもしれない。右にも左にも寄せなくてもいいという解放感がこれほどとは。
……しかしなぁ。
やはりこの3Dが気になって仕様がない。こんなぶらぶらしててうっかり勃起したらモロバレじゃねー?

「イマイー、パンツはいたー?」

ドンドンとドアを遠慮なしに叩く音と共に伊藤の声が響く。そのままドアを開けそうな勢いに、慌てて返事をする。

「ぱ、パンツははいた。ちょ、今ズボンはくから待ってろ」

「えー?なんで、いいじゃん見せろよ!」

言いながらバンとドアを開けて伊藤が入ってきた。

「うわわわわ、伊藤お前待てって言っただろ」

「んだよ、別に男どーしだしいいじゃん」

「ふつーのパンツと違うだろこれ!」

「…そうか?ほら、手ぇどけろ。3D見せろ」

必死に前を隠してがんばっていたが、段々男同士のこの攻防戦がむなしくなってきた。
伊藤は諦めそうにないし、ものすごく無駄に疲れる。…仕方ない。了承の返事をして渋々手を離した。

「おおー、3D!」

伊藤の目がきらきら輝く。
そんでまじまじと飛び出る布地を見る。中には勿論俺のチンコが収納されている。
見すぎ!見すぎだ、伊藤!

「なぁなぁ、はき心地はどうよ?」

「まっ、まぁまぁだ。」

「…ふぅん」

………こらこらこらこらっ。近い、近い、伊藤!色んな角度から見んなって!
生身の人間が現在進行形ではいてるパンツ、んな凝視するもんじゃねーだろ!

「てゆーか、チンコのサイズ合わなかったらどうすんだろ。そう思わん?」

うん、思う。思うから、まじであんま見ないでくれ。
ちょっとなんか、俺やばい気が。……下の方がやばい気がする。
下半身に血が集まる感覚に、頭の血の気が引いていく。

…あぁ、いかん。
勃起する。

「………あの、イマイ?」

「……わかってる。待ってくれ」

「え、え、待ってもいいけど待っててどうにかなるのコレ」

ならん気がする。
何故だ。何故反応する俺のチンコ。何故伊藤に見られて反応するのだ!

必死に目をつぶって下半身を鎮めようとするも全くもって言うことを聞いてくれない。3D感を増していってるであろうパンツがキツくなってきた。

「い、いまい〜、全然ダメみたいだ。すっかり3Dだ。……俺、帰った方がいいかな?」

「………伊藤。」

「えっ、なっ、なに」

「…パンツ見せろ。」

「ぱっ、パンツ?誰の?」

「お前の。」

「なっ、なんで……って、うわぁ!」

逃げ腰になっていた伊藤の腕をがっしりと掴んだ。よほどびびったのか後ろに数歩よろめく。そのタイミングを見計らって浮いた足を払う。どんと音を立てて伊藤は尻もちをついた。

「………やっ、あの、なにどうしたの今井、お前なんか怖い」

後ろ手に両手を着き、困った表情で苦笑いする焦った伊藤が妙に俺を刺激する。
単刀直入に言うと、勃起は鎮まるどころか更に盛り上がっている。あろうことかこの男、伊藤に反応して!
そして無性にパンツが見たいのだ!伊藤の。

「パンツ見せろ。」

床に座り込む伊藤のボンタンを脱がせるべく屈む。
あまりに予想外の出来事なんだろう、伊藤はベルトに手を掛けられるまでぽかんと口を開けて俺の動向をじっと見ていた。

「――いっ、今井。」

「なんだ。」

「本気?」

「マジだ。」

ザーっという音が聞こえるんじゃないかってくらいの速度で伊藤の顔が青ざめた。
なんかガキん時のいじめられっこみたいでカワイくて、三橋が伊藤をよくいじってる気持ちが少しわかった。
バックルを外し終わり、ジッパーを下ろそうとしたところで伊藤ががいきなり覚醒した。

「ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待っ……あっ、待てってば!」

だが俺の方が一瞬早かった。素早く金具を下げ、膝の辺りまでズボンを一気におろす。
次いでズボンに手を掛けた伊藤が引っぱられた勢いで寝転ぶ形になった。

「痛って…イマイ、やめろってば!」

必死でズボンの縁を掴み、これ以上は下ろされまいと伊藤が動く。そのたび、目の前で長ランから覗く太ももが揺れる。
その向こう側に目尻に涙が浮かんだ伊藤の顔。

いかん、ムラムラする!

思いきりズボンを引っ張った。
力では俺の方に歩がある。多少手こずったが脱がす事に成功した。

ひっくりかえった伊藤のパンツはシンプルなボクサータイプの黒だった。
だが布面積がやや小さめで、浅めのはき具合のそれからちらりと見えた腰骨が艶かしい。

「……いっ、いとう…」

心臓の音がうるさい。
眼中いっぱいに伊藤。
伊藤の顔、めくれた長ラン。黒のパンツ。伸びやかな脚。やばいぞ俺、一体伊藤をどうしたいんだ。
涙がにじんだ伊藤の目は思いっきり警戒心をあらわにして、俺を見ている。
当たり前か。下半身パンツ一丁で、しかも勃起している男にズボン脱がされたらいくら男でも貞操の危機を感じるだろう。
―――って待て。
俺は伊藤の貞操を奪いたいのか。
パンツ見てやろうと思っただけじゃないのか。ムラムラして。
……ムラムラする時点でいかがなものかという気もする。が、今。現在進行形でムラムラしてる。誤魔化しようがない。
そしてパンツ見てもおさまらないこの昂りはなんなんだ。つうか悪化してる。確実に。

……とりあえず、パンツも脱がせたい……っ!

「いとう…」

「………!」

じりじりと近づく。伊藤は腰がぬけたのか尻を床に付けた状態で後ずさる。
伊藤は長ランを生かしてパンツを隠してしまっていたが、逆に長ランから伸びる生足と生足の奥に見える影の部分が、さっきの黒いパンツと腰骨を強く俺に思い出させる。
どん。
伊藤の背が壁にぶつかった。「あっ」と小さい声を出し、不用意に後ろを向いた隙に足首を掴んでひっぱる。ずるずるとこちらに近づける程長ランが捲れあがる。
伊藤は半泣きで、可哀相と思うが俺の何かが止まらない。待ち望んでいた黒いパンツと腰骨が見えた。
間髪いれずにパンツに手を掛ける。力を込めるとズボンより余程簡単にパンツは脱げた。

「うっ…」

あられもない伊藤の姿に、気づくと3Dパンツがこれ以上ないくらい上向きでパンパンになっている。正直痛い。
少し迷って脱ぎに掛かった。
脱げない。パンパン過ぎてなかなか脱げない。
チンコと布地をなんとかずらしながら脱ぎにかかる。パンツを脱ぐことに集中しすぎてうっかり伊藤のことを忘れてしまった。
パンツが脱げた!
喜んだ瞬間、顎にするどい衝撃を感じ俺は気を失った。



意識が戻ると下半身にタオルが掛かった状態で俺は仰向けに倒れていた。
起きた瞬間、混乱したが徐々に全てを思い出しヘコんだ。
伊藤のあの顔が忘れられない。それと一緒にあの姿も。

どう責任をとろう。

次に伊藤に会った時を思い、溜め息をついた。
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