今日俺
□青空と恋の病とミニスカート※
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屋上で昼寝してたらいきなり全身に水を浴びせられた。
髪は寝ちまって長ランはびっしょり。そんな俺の目の前に突き出された選択肢はセーラー服。
ロングスカートかミニスカート。
青空と恋の予感とミニスカート
「なにすんだよミツハシー」
雲ひとつない青空に俺の間抜けな声が響いた。
いきなりこんなことされたらもっと怒っていいんだろうけど、ハイとタオルを差し出してくる三橋の満面の笑顔を見てたじろいでしまった。
絶対なにか企んでる。
まぁそもそも企んでなきゃこんなことしないんだけども。
にこやかに近付いてくる三橋に、警戒心あらわに後ずさる。が、すぐに背中が壁にくっついてしまった。
「イトー」
器用にキラキラ輝かした目で覗き込まれる。
「大丈夫か、タイヘンだったな。風邪を引くといかんからこれを着ろ」
自分でやっといてなんなのだ、とは思ったが口には出さない。顔には出ているかもしれないが。
コイツのしでかす事の意図が読めない場合はむやみやたらに口を挟まない方が良い。
と、思う。
まぁ読めたとしても心の準備をする時間があるかないか位のものだけど。
三橋の挙動に集中していた俺は手渡された物をろくに確かめずに受け取り、おもむろに宙に広げた。
「………。」
セーラー服。
セーラー服だ。
…セーラー服?
これを着ろ。
これを着ろだとミツハシ。
これはなんだ、女子の制服じゃないか。
そして俺は女子じゃない。
お前は一体何を考えてるんだ。
「…これ、女子の制服だぞ」
「ロングとミニどっちがいい?」
「はァ?」
「俺様的にはミニがいい。そういやロングは昔見た」
「ななな、なに言ってんの。なんでスカートはかなきゃ駄目なの。ジャージ着るからいいよ」
「伊藤」
いきなり真面目な顔すんな。
思わず身体がびくっとなった。自分の反応が恥ずかしくて頬が火照る。
三橋がみてる。
目を合わせた状態がたまらなくなって視線を下方に逸らした。
「なぁ、着ろよ」
無駄に男前な顔がムリヤリ視界に割り込んでくる。
「風邪引いちゃうぞー」
俺は面食いだから三橋の顔に弱い。
「なー、着ろってば」
ついでに言うと、強引なのも、結構好き。
「脱がしてやるよ、ほら」
あぁ、あともうちょっと押されたら、ヤバイかも。
「ゆーこときけよ」
「……うん」
三橋ってズルい。
俺の好みの顔してその気の強さで絶妙のタイミングで欲しいトコロに欲しいものをくれる。
いつもそう、逆らえねーんだ。
それが少し気持ちイイなんて、そんな俺はちょっとオカシイのかもしれない。
これって恋なのかなーなんて思うのは変なのかな。
三橋とはもうチュウしちゃったし、それが気持ちよくなっちゃって止まんなくなって収まりがつかなくなって、触り合ったあげくふたりしてイっちゃったなんて事も何度かあって。
これってなんなのかな。
なぁ三橋、俺たちってなんなんだろう。
「できたぜイトー、…どんな感じ?」
「…足がスースーする。ジャージはきたい」
「んーな、男心に残念な事すんなよ。せっかくスカートはいたんだから足出しとけ」
「つうかお前はどんな感じなんだよ、こんなん着せて感想ナシかよ」
似合わないなんて言われたらなんかすげーショックだけど、思いきって訊いてみた。
スカートの裾が風に吹かれてひらひらしてる。思わず体育座りしてスカートがめくれないように太股裏で押さえた。
「……たまんない。スカートん中手ぇ突っ込みてー」
「…エっ」
一言発するか、そんな一瞬で唇に食らい付かれた。熱い舌になぞられ割り込まれ、尖った歯に甘噛みされる。
気持ち良さと少しの痛みに、頭がくらくらして背筋から腰にかけて甘いしびれがはしる。腰から下に力が入らなくなって、くっついていた膝同士が少し離れた。
そうしたら、見計らったかの様に膝の間から三橋の右手が侵入してくる。
スカートの布地越しに俺の手に当たると、もう片方の手で壁に右手を押し付けられた。
「有言実行」
にやりと不敵に笑うその顔がやっぱり好きで、今度は自分から口付けた。
少しだけ驚いたように開かれた目にうっとりする。三橋の、いろんな顔を見てみたいと思う。
きっと全部、俺は好きだと思う。
やっぱりこれって恋なんだ。
だって胸がどきどきする。
三橋の手が肌の上を進んでくる。互いの汗で湿った感覚が、触れ合ってる事をリアルに伝えた。
三橋の身体が手の進入に続いて押し入ってきた。俺は素直に膝の力を抜いて受け入れる。スカートだから、素肌に三橋の短ランが擦れる。いつもとは違う感触にやばいくらい興奮する。
あ、しまった。俺ってば目を閉じちゃってる。
三橋がどんな顔してるのか見たくて刺激に思わず閉じてしまう目蓋を押し上げた。
「……あ、あ、みつはし……」
三橋、三橋、なんて目をしてるんだ。
欲を孕んだ目が俺をみてる。
目の縁を赤くして射抜くように。
腹を空かせた野生動物ってきっとこんなだ。
「…イトー…」
声が掠れてて色っぽい。
俺ってば三橋の声だってこんな好き。
もっともっともっと聞きたい。
「…なんて、目、してんの…ミツハシ」
三橋の瞳が揺れた。
野生のそれはふっと消えてしまったけど、空腹感は残ってる。
「イトー…イトー」
「どした…?」
首元に顔をうずめてくるからくすぐったい。子供みたいに肩口に額をこすりつけてくる様がらしくなくて、でも可愛くて、空いてる左手でキラキラ光る髪を撫でた。
太陽と三橋の匂いがする。
「イトー」
「うん?」
「俺限界近い」
「…まだ触ってないのに?」
「そーゆーんじゃなくて…いれたい」
「………」
……あーそっか。
そういや俺たち健康な男子だった。
三橋から感じたそれは雄の性だったんだなとぼんやり思う。
俺は触り合って気持ちヨクなってそれで満足だったけど、三橋は違うんだって、それって、
「俺に…?」
「お前以外に誰がいるかアホー」
メンチきられてまた噛みつかれた。
三橋、三橋、三橋。
俺、お前に求められているんだな。お前も俺に恋してる?
「……あッ、な、なに、ミツハシッ…」
三橋がいきなり下着に手を突っ込んできて、反応し始めてる俺のチンコを性急に擦り上げた。
それは強引で、乱暴で、痛いくらいなんだけど、三橋にされてるってだけでひどく興奮してすぐにかたくなった。
「ミツハシッ…俺も、する、からっ…」
先走りでぬるつき、快感の度合いが増した。耳に入ってくるいやらしい水音に煽られる。
三橋のベルトに手を掛けたけど握り締めてしまうだけでバックルから外せない。
「さきイって…伊藤」
「……ッ、あッ……」
耳元でささやかれ、あっけなく果ててしまった。
「みつはし、なにして…」
解放感にひたる間も無く、三橋の行動に目をみはる。
俺の下着をスカート残して器用に脱がせたかと思ったら、手に放たれた精液を俺の内股に塗り付ける。あれ、これってもしかして。
「素股しよーぜ、伊藤」
青空に浮かぶ金の太陽が笑う。
太陽に恋した人間は、その現象を甘受するのみ。