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□白い兎との馴れ始め
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彼女が出て行った襖を眺めながら、夏輝に話しかける。

「彼女、前にも僕たちの世話をしてくれた子だよね?」
「そうッスね。あの子すごく肌綺麗ですから、さぞかし手もきれいなんでしょうね!」

キラキラした目で襖の方を見た夏輝は彼女の事が気に入ったらしく、ソワソワしている。
音がせわしなく鳴っている。

「あの子、欲しいな」
「・・・・・・・」
「えっ?」

ぼそりと言った言葉は意外にも部屋に響いてしまい二人が反応する。
弥太郎は驚いているし、夏輝は嬉しそうに期待してる。

彼女の名前さえ解らないのに、
僕はおかしいのかもしれない。

しかし、彼女から聞こえてくる音は、なんの歪もなく、綺麗な、
例えるならば水滴が水に落ちる音のように、
僕に届く。
ただ一つだけの感情だけを乗せて。



その感情は、


僕がにーにに向けている様なモノではなくて、
ただ純粋な、

    好き




ほどなくして首領と彼女が戻ってきた。

さて、今回は作戦を立てるという名目でここに来ていたのだが、
少し変更させてもらおう。








「お持ちしました」

温かい緑茶を夏輝さんと弥太郎さんの前に置き、
ジュースとお菓子の詰め合わせを遥さんの前に置く。
その作業の間、夏輝さんからの視線が痛かった。
何か感に触るような事をしてしまったのか?

作業が終わり部屋の隅に避難
夏輝さんからの視線はもう無くなって、今度は首領を見ている。
話し合いが始まるのだ。
所謂、作戦会議


「ねぇ、首領」
「なんであろー」

最初に話しかけたのは遥さんからだった。

「その子、うちにくれない?」
「おろ!?」
「え?」

遥さんが指さす先には私しか居らず、思わず変な声が出てしまった。
それは首領も同じで、ビックリしたのか黄色い目が真っ黒になっている。

「ななな、なんでであろー」
「その子が気に入ったからかな?
野羅(うち)って少人数だからさ、人手が足りなくて」

にこやかに笑いながら言う遥さんに思考がやっと追い付いた私は、

「私なんかがそちら(野羅)に入ってもいいのでしょうか?」

なんて言ってしまった。

まぁ、この言葉からすると、私は入ってもOKという返事にもなるのだが、
首領もそれを解ったのか、

「だ、ダメであろー」
「なんで?ダメ?」
「かわいく言ってもダメなものはダメであろー」
「ケチ!」

 
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