zerodream

□二つの家
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繭を探しに黒澤家を出る。
家と家を繋ぐ渡り廊下に繭の姿があった。


「おねえちゃん!」

「あ…危ない!」


繭の後ろに女の霊が迫っていた。


「急がないと…!」


私たちは急いで渡り廊下に向かい繭を追いかけるがすでに繭の姿が無く扉には鍵がかかっていた。


「…他に入り口を探さなきゃ…」

「そうだ!
繭は樹月に謝らなきゃって言ってたから…
樹月の所に行けばいいわかるかも!」

「あ!ナイスアイディアね、聖音ちゃん!
早速樹月くんの所へ行きましょう」

「…っとその前にこれ…
さっきそこの棚から見つけたけど目を通した方がいいよ」


朔夜はいつの間にか手に入れていた手記をくれた。


『村に点在する道祖神らしき石仏には、
他の地域に見られる男女神のものとは違い、双子の巫女らしき仏が刻まれている。

村の子供たちによると、この「双子巫女様」は村の神としてまつられているらしい。

この屋敷に残る古文書を調べたところ、双子巫女のことを「紅贄(あかにえ)」と記している部分がある。

「秘祭」とはこの「紅贄」にまつわるものなのだろうか。』

『この桐生家は、渡り廊下でつながった立花家と屋敷の構造が対となっており、「双子の家」と呼ばれている。

その役割は、祭りに使われる「双子巫女」をしばらくの間この家に住まわせ、
巫女としての禊(みそぎ)を行うというものらしい。

禊の期間中、双子は屋敷を出ることを許されないが、
天と地、二本の渡り廊下を使って二つの家を行き来できるようになっている。

立花家側からは二階にある天の橋を使うが、
桐生家側からは、地下にあるといわれる地の橋を使う。

地の橋は、この村の地下に広がる「深道」(ふかみち)にも繋がっているらしい。

「深道」とは、村の地下にあると言われている自然洞窟のことであり、
その一番深い場所は、見てはならない場所があると伝えられている。

そこには、一部の宮司や忌人(いみびと)と呼ばれる特別な人間しか立ち入ることが許されない。
その場所が「黄泉の門」であるとしたら、「秘祭」は地下で行われるのだろうか。』


「とりあえずさ
ここは桐生家って事はわかったよ」

「…」

「兎に角…
今は樹月くんのとこに行こう」


私たちは樹月のいる蔵へ向かった



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