zerodream
□双子
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目の前に座る2人の影。
一人は2つに髪を結い上げ紅い着物をきた私そっくりの女の子。
一人は黒髪背中まで伸ばし淡い水色の着物と紺の袴を身につけた朔夜にそっくりな男の子。
『…蒼海
本当に八重たちを逃がすの?』
『うん…大丈夫
僕たちもその後に逃げるから』
2人はゆっくりと姿を消した。
その場所は先ほどの部屋とは違って少し色づいていた。
紅と蒼の着物や座布団や机が1つづつその部屋には酷く懐かしさを感じた。
「…懐かしい…ね」
「うん…私もそう感じる…
何でなんだろ…?」
座布団の上にはそれぞれ日記が置いてあった。
私達はその日記を読んだ。
『もうすぐ儀式が行われる。
学者さんは捕まって閉じ込められてしまった。
蒼海と樹月が八重と紗重を逃がす。
私達もその後逃げるみたい。
だけど、双子巫女がいなくなったこの村はどうなるのだろう。
両親を早く亡くしてしまった私たちを育ててくれた良寛おじさんに迷惑をかけたくない。
それに睦月も華凛お姉ちゃんも×の中にいる。
私も行きたい。蒼海と一つになりたい。
睦月に会いたい。』
「…華凛は歌海と蒼海の姉?
その姉たちの儀式も失敗…」
「それに最後の一文字…"睦月に会いたい"
睦月は確か儀式の贄に…
歌海は睦月が好きだったのかも…」
「…………」
朔夜は紅い蝶の描かれた日記を閉じ蒼い蝶が描かれた日記を開いた。
『もうじき儀式の年が来る。
早く事を実行させなければいけない。
その後は僕達も逃げる。勿論樹月もつれて。
だけど、歌海は逃げることが出来るのだろうか。
×には姉さんと睦月がいる。
心優しい歌海はそれを許すのだろうか。
僕は歌海を殺したくない。
本当なら僕が落ちなきゃいけないのに。
僕が男だから、僕が兄だからごめん。』
「男だからって…どうして?」
「…多分この村では男と女なら先に生まれようが後に生まれようが男が"兄"となるんだろうね
兄である蒼海が妹である歌海を殺さなければいけない
蒼海はそれが嫌だったんだよ」
私は静かに日記を閉じた。
「どうしてこんな狂ったような儀式をするの?」
「…仕方ないよ
これがこの村に伝わる地鎮祭なんだから」
『…ごめん…ごめんね…歌海…』
朔夜の後ろをスッと蒼海が通り過ぎていく。
「…朔夜、こんな儀式なんて終わらせよう
一刻も早く終わらせてこの村を解放しよう」
「………聖音」
朔夜は一瞬躊躇うような素振りを見せたがすぐにフッと微笑んだ。
「それで早く帰ろう
僕まだ課題終わってないんだよね」
「うん!実は私も…
それじゃ、レッツ鍵探し!」
私達は鍵探しを再開した。
そんな私達の背中を悲しげに見る歌海がいた。
『…お願い…蒼海を…
…皆を…この村を…助けて…』
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