zerodream

□始まりは
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緑が綺麗で川の水も透き通っていて綺麗だった。


「こんなに綺麗なのに!
この沢ももうすぐ無くなっちゃうんだね」

「本当だね
よく勿体ないことするよな」


涼しい風が通り抜け私達の髪の毛を揺らした。
この沢を訪れてすでに数時間が過ぎていた。


「そろそろ帰ろうか?」

「んー…そうだね
あまり遅くなるとお姉ちゃん達が心配するもんね」


ベンチから腰をあげて立ち上がろうとした瞬間だった。


――…チリーン


「…?」


―――…チリーン


目の前を見たこともない紅色の何かが通り過ぎる。


「…紅い…蝶…?
……………珍しいな」

「蝶…?」


紅い蝶が2匹…。
まるで私達についてきて、と言ってるみたいに通り過ぎる。


「追いかけてみようか?」

「う…うん」


私たちはその蝶の後を追いかける。


「………ブハァッ」

「ちょっ、大丈夫?
朔夜って運動不足なんじゃない?」

「そうだよ…!うるさいなぁ…」


隣でバテるお兄ちゃんを見て苦笑する。
顔をあげると大きな鳥居が立っていた。


「何、ここ?」

「…あったっけ?
こんなところに鳥居なんて」

『…こっちにきて…お願い…』

「「え…?」」


どこからか声が聞こえてきた
私と…同じ声…?


「聖音…ふざけるなよ」

「ち、違うよ!…私じゃない」


朔夜に抗議して鳥居の方に目を向けた。
鳥居の影から白くて細い手が手招きをしている。


「ほ、ほら
私じゃないでしょ?あはは…」

「ほ…本当だ…!
……ごめん、聖音」


冷や汗をかきながらも恐る恐る鳥居に近づいた。
朔夜も後ろからついてきた。


『…お願い…皆を助けて…』

「!!」

「…っ」


手招きをしていた手がいきなり私と朔夜の腕を掴んだ。
その瞬間無数の紅い蝶が私達の周りに渦巻いた。



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