Crossdream1

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ーー•••




「だいぶ遅くなっちゃいましたね


「中途半端に眠って逆にきつい」


「この嵐で汽車が遅れましたから•••」



時間は真夜中であたりは静かだ。
オールを漕ぐ音しか聞こえてこない。
早くベッドに横になりたい。



「そうだ、そういえばアルジェは歌が上手いんですか?」



いきなりされたアレンの質問に僕は目を見開く。
なんて、唐突な•••。



「••••••、さぁ?どうなんだろうね」



キラキラなアレンの視線に耐えきれずに僕は視線を真っ暗な海へと向けた。



「昨日、神田が言ってましたよ
”そんなに歌が聴きたいならアルジェに歌ってもらえ”って」


「へぇ、そうなんだ」



ユウがそんな事を言うなんて珍しい。
明日は雨か、それとも嵐か。

キョトンとしているとアレンはまるで子どもがものをねだるかのような笑顔を浮かべていた。



「よかったら今度聴かせてください
僕、一回聴いてみたいです」



そう言ったアレンに僕は意地悪な笑みを浮かべた。



「嫌、アレンの為には歌わない」



そういうとアレンの顔は一気にムスッとした顔に変わる。

表情がクルクル変わって面白いなぁ。



「神田の為には歌うんですか?
なんだ、2人はケンカばっかりのくせに結局仲がいいんですね!」


「ユウの為に僕が歌うって?
だあれがそんなこと言ったんだ?」



素直じゃないな、とアレンは笑う。
僕は外方を向いて頬杖をついた。


”ここにいる誰か”の為に歌うわけない。
僕はいつだって”自分”の為に歌ってるんだ。
そう、耳障りなあの旋律を消すために。



「アレン、僕は誰の為にも歌わないよ」


「.....」



そうポツリと呟くとアレンは驚いた顔で僕を見ていた。
そして何かを言いたそうに口を開くもすぐに閉じた気がした。

しばらくすると教団に到着し、僕もアレンも眠い目を擦りながら船を降りた。




「もう真夜中だなあ•••
回収したイノセンスはどうしたらいいのかな」


「科学班の方なら誰か起きてらっしゃると思いますよ」


背伸びをしてアレンの方を向いた。



「科学班は忙しいからね
アレン、一緒に行こう」


「はい、アルジェ
じゃあ行ってみます」




アレンと階段を上ろうとしたときだった。




ドサッ




「!?」


「••••••、リィ?」
 

「え?」




目の前の階段にはリィが横たわっていた。




「リ、リナリー!?
どうしたんですか!!」


「リィ!
いくら何でも床で寝るのは•••」




慌ててリィに駆け寄って体をゆすった。
だけど、反応は返ってこないどころか起きる気配もなかった。


これはおかしい。




「も、戻ったか、アレンとアルジェ•••」


「!」


「リーバー!」


「リーバーさん!?」




階段の上から姿を現したのはリーバーだった。
よく見ると傷だらけだ。




「そのキズ•••?
何があったんですか」


「に•••逃げろ、コムリンが来る•••」


「は?」


「コムリン•••?」





ドカン、と壁を突き破ってきたのはいつか聞いたことのあるコムリンという名前のロボットだった。




「来たぁ」


「え"ぇえ"!?
な、何アレ?何アレ!?」


「また新しく作ったのか!?
ほんっと、暇なんだな
暴走してるみたいだけど?」


「まったくだよ!」



僕たちはコムリンの姿を見ると一目散に走り出す。




「くっそ、なんて足の速い奴だ•••」


『発•••見!
リナリー・リー、アレン・ウォーカー、アルジェ・バロウズ
エクソシスト3名発見』


「なんか認識されてるのは気のせいですか、アルジェ?」


「いやアレン、絶対違う」



なんかとても嫌な予感がする。




「気のせいじゃない!
逃げろ、アレンとアルジェ!
こいつはエクソシストを狙ってる!!」


「ちょっと待って•••!」


『手術ダ―――!!』




死に物狂いで走ると、コムリンはすごい勢いで追ってきた。




「うわわわっ
追ってくる!追ってくる!!
リーバーさん!ワケがわかりません!!」


「リーバー!
コムリン、どうにかならないの!?」


「ウム、あれはだな!
コムイ室長が造った万能ロボ『コムリン』つって•••
見ての通り暴走していてどうにもならない!」


「「何で!?」」




僕とアレンの声がこだました。





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