BOYS

□残酷な幸せ
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やっと久々に会える。

嬉しかった。

でも、苦しかった。

貴方から拒絶を聞くと分かっていたから。



「やあ、久しぶりだね」

並中の屋上で見た貴方は出会った時と変わらない程、眩しかった。


「恭弥、会いたかった」

貴方は僕を優しく抱きしめる。

いつもと同じだった。

けど、それが腹立たしかった。


「………離して」

「なんか今日はやけに冷たいな」

「…うるさい」


僕は彼の腕の中から抜け出した。


少し距離をとって振り返ると、貴方は僕が言おうとしてることに気付いて、少し寂しそうにした。


「そっか…。もう知ってんだな」

「……本当なんだ」

貴方のその言葉で、嘘じゃないと分かった。


「ごめんな。お前にはなんか言いづらくて…」

「……分かってる…」

貴方が、僕を気遣って言えなかった事なんか、そんなことぐらい分かる。


「恭弥、…別れよう」

びくりと体が震えた。


「…っ……」

ヤダ。どうして。

僕をひとりにしないで。

他の女の所なんかいかないで。

別れたくない。

別れたくなんてない。


口を開けば、彼を困らせてしまう事ばかり言い出しそうで、何も言うことが出来なかった。


「恭弥…」

「っ、来ないで!」


そんな僕を知ってか知らずか、近付いて来ようとする彼を拒絶した。


今来られたら、僕は抑え切る事が出来ない。

こんな僕を貴方に見られたくない。



「……もう、貴方を想わない」


「……うん。でも恭弥、これだけは言わせて欲しい。俺は出会った日からお前を愛していた」

「っ…」

やめて…。

僕を、乱すな…。


拳をギュッと握り締め、屋上から出ていく彼を僕は背中で見送る事しか、出来なかった。


彼の気配が完全に消えると、僕は力無くへたり込んだ。

地面には、僕の零した雫が溜まっていく。



「僕だって……貴方を、ディーノを愛していたよ…」

頬を滑る雫は、とめどなく溢れ出す。

貴方への想いも、溢れていた。



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