BOYS
□kiss...
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黒曜から並盛町に越してきた沢田家。
その一人娘は家から近い並盛中学に通う事になった。
………のだが。
「ちょ…母さん、何で早く起こしてくれなかったの〜!」
少女が新しい制服に身を包み、慌ててリビングに来た。
「あら、その制服も似合うじゃない」
少女の母、奈々は笑顔で返した。
「あ、ありがとう…ってそうじゃなくて〜」
「ツナの事は何度も起こしたわよ?でも後5分って聞かないんだもの」
「うぅ〜」
転校初日、沢田綱吉は遅刻寸前のピンチだった。
「い、行ってきまーす」
綱吉は急いで玄関を出て新しい学校、並盛中学へと向かった。
遅刻の時間なので登校する生徒は綱吉以外一人もいない。
綱吉はその様子に気付いていたが、遅刻覚悟で走っていた。
「あ…ココ?」
綱吉は息を切らしながらも、ようやく並中に着いた事に安心した。
「………君、遅刻だよ」
横から鋭い声がして、息を整えながら見ると、そこには鈍感な綱吉でも分かる殺気を出している少年が立っていた。
「え…あ、すみません!寝坊しちゃって…」
その殺気に怯えて、とっさに謝った。
「………君、見かけない顔だけど転校生かい?」
「え…あ、はい。そうです」
「ふぅん」
彼は切れ長な瞳を細め、ニヤリと笑った。
「…本来なら遅刻した奴は僕が咬み殺すんだけど…」
か…カミコロスって何ですか!?
「見逃して欲しい?」
その言葉に綱吉は大きく頷いた。
「そう…。なら、見逃す代わりに…」
彼は綱吉に近付き、そっと頬に触れた。
綱吉は突然の事にビクッと肩を震わせた。
そしてその直後、ちゅっ…と軽いリップ音を鳴らしてキスをした。
「これで遅刻をチャラにしてあげる」
軽く放心状態な綱吉に耳元で囁き、カプッと軽く噛み付いた。
「ひゃっ…!」
綱吉は一気に現実へ引き戻され、目の前にいる男の行動を理解した。
綱吉は耳を押さえ、顔をりんごの様に真っ赤に染めていた。
「な…なな、何するんですか!」
「キス」
「っ!」
サラリと返された言葉にこれでもかと言う程まで赤くなる。
それを見て彼はクスッと笑った。
「さ、早く職員室に行きなよ。多分担任が待ってるから」
そう言い残し、肩に羽織った学ランをなびかせて去って行った。
「な…何なの、あの人」
綱吉は彼が去って行った方向を眺めていた。
「てか…ファーストキス、だったのに…」
綱吉は唇に手を添えた。
この時すでに、彼への恐怖はもう無かった。
「あ…職員室!」
名前も知らない彼の事を気にしながらも、綱吉は職員室へと急いだ。
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