Novel

□百聞は一見にしかず
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窓から零れる柔らかな日光
適度な気温
さらに放課後


これはまさに



「絶好の昼寝日和…」


ふあぁ…
大きく欠伸を一つ。


「こら、藤君!ちゃんと集中しなきゃだめだよ。明日から期末テストなんだから」


うとうとしていると頭上からハデスの声が降ってきた。

怒ってはいないようだ。
ただ眉間に皺を寄せて戒めるように俺を見つめる。


『そんな顔しても可愛いだけなんだけどな』


ふ、と無意識に顔が緩む。
それを見たハデスは小さく息をついて俺と向かい合わせにソファに座り直した。


「それで、特に解らないところとかは無い?理科とかなら教えられるから、遠慮無くどんどん言ってね」


そう言って教科書を手に取ってパラパラとめくる。

別に勉強なんてしなくても点数なんてある程度は取れるのに…

気だるげに、何気なく机に山積みになった教科書に目をやった。

と、ある四文字が視界に入っていいことを思いつく。
楽しく、かつ頭にも入る勉強法。

不意に漏れてしまった不敵な笑みは、幸いハデスには気づかれなかったようだ。


「なぁ、先生」

「ん?何?藤君」

「わかんないところがあんだけど」


途端に顔を輝かせるハデス。
きっと頼られたのが嬉しかったんだろう。
きっと、これからの展開なんて微塵も想像していないんだろうと思う。

立ち上がってハデスに歩み寄る。
そして肩に手をかけて、やんわりとソファに押し倒した。

鈍いハデスもさすがに危険を感じたようで、顔を引きつらせた。


「えっと、藤君?解らないところって言うのは…」

「保健体育」

「っ!!?」


驚愕の表情を浮かべるハデスの首元に顔を埋めて、舌で首筋をなぞる。
そうすれば抵抗しなくなるのを知っていたから。


「ちゃんと教えてくれよ?先生」


ありったけの営業スマイルで笑いかけてワイシャツのボタンに手を掛ける。


「ちょ、待っ…いやぁぁぁ!!!」








後日、藤君は保健体育のテストで満点をとったそうな。



end

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