Novel

□側にいるから
1ページ/1ページ

「38.6℃」



朝から先生の様子がおかしいことは気付いてた。
顔は赤いし、時折咳もしていたし、何より足取りが覚束ない。
どうにも怪しいので熱を計らせてみたらこれだ。


「最初に症状が出たのはいつぐらい?」

「うーん、よく覚えてないけど…多分3日くらい前かなぁ」


ソファーに横になって天井を見上げる先生の息は荒くて苦しそうだ。
まぁ熱があるんだから当たり前か。

にしてもここまで酷くなるまで放っておくとか…


「あんた本当に保健医かよ」

「医者の不養生だね…情けないや」


ぼんやりと微笑む先生。
その表情は心なしかいつもより弱々しく見えた。


「じゃあ俺アクエリか何か買ってくるからおとなしく寝てろよ」


とりあえず風邪に効きそうなものでも買ってこよう。

そう思って保健室のドアに向かった。

その時


「ま、待って藤くん!!」


制服の裾を掴まれ、引き止められた。


「何?」

「えっと、あの、その…」


何か言いたそうに視線を泳がせるがなかなか言い出そうとしない。


「何か言いたいんならハッキリ言えよ」

「えっと…」


熱のせいで赤い顔をさらに赤くする。


「今は、側にいてほしいんだ…」


その思いがけない言葉に一瞬固まる。
それと同時にきゅんとなってしまった俺は相当やられているんだろう。

ふ、と笑って引き止めた手を握ってやる。


「仕方ねぇな…その代わり、ちゃんと寝てろよな」


先生の顔がふにゃ、と緩んだ。


「ありがとう、藤君」




ああ、これだから離れられないんだ。

先生がこんなに可愛いから。

不意打ちの笑顔で俺を射抜くから。



「あんたには敵わねぇよ」

「え?何?藤君」

「何でもねぇ、独り言」







でも好きなんだ。


あんたのそういうところ


引っくるめて全部。





(引っくるめて全部、好き。)












「そういや先生、熱がある時は汗かくのがいいんだってさ」

「ん?うん、確かにそうだけど…って
藤君なんでそんなに息が荒いの!?
そして何で僕の服を脱がそうとしてるの!?」

「あ?気のせいだろ。気にすんな」
「いやいや気のせいじゃな……アッー!!!!」













次の日
ハデス先生の熱はすっかり下がって元気を取り戻しましたとさ



めでたしめでたs((








end.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ