Novel

□一人が怖い夜には
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ここは どこだ?



見慣れた校舎
見慣れた風景



ああ、よく見ればここは常伏中学だ



窓の外の空を見上げる



五月晴れの水色が眩しい
あまりの眩しさに目を細めた



廊下を歩けば上履きがキュ、キュ、と音をたてた



『あれ?』



廊下の先に見慣れた二人の後ろ姿を見つけた



間違えようがない



「経一!!鈍!!」



二人の名前を大声で呼んだ



しかし二人は気づかない



『声が小さかったのかな』



おかしいな、いつもなら気づくはずなのに



もう一度名前を呼ぶべく口を開いた





その時




ゴプッ…




「なっ…!?」




突然僕の足元の床が沈んだ



沈んだ床は蟻地獄のように僕の足を引っ張って、体をどんどん飲み込んでいく



振り返ると二人の姿がおぼろになるほど遠のいていた



「けい、いち…にぶる…!!」



小さくなった二人の影に手を伸ばす






嫌だよ





待って





置いていかないで



僕を置いていかないで







ードプン…ー






僕は暗い海へと引き込まれた





苦しい
寂しい
呼吸すらままならない








「僕を一人にしないで…」
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