Novel
□曖昧3メートル
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カーテン越しに紙の擦れる音がする
同時にカツカツというペンで何かを書く音も聞こえる
ぼんやりとベッドに寝そべりながらその音に耳を澄ませた
しばらくして音が消えて、また音がしたと思ったら
それはシンクから水が流れる音だった
『茶でもいれんのかな』
ベッドを囲むように掛けられたカーテンに遮られて、ここからでは先生の姿が見えない
音だけしか 聞こえない
そう思った瞬間 何故だか心臓が跳ねた
この薄いカーテンが
自分と先生とを隔てる壁に見えたからだ
彼は先生 自分は生徒
結ばれたい 結ばれない
届かない 届けたい
もし俺がこの思いの丈をぶつけたら、きっと先生は受け入れてくれるだろう
「love」じゃなくて「like」として
でも俺の想いは「love」の方
いつか、伝えることはできるのだろうか
静かな保健室
俺と先生との距離
それはカーテン越しの
曖昧な3メートル
end.