Novel

□My hope is... (逸)
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7月7日
それは織姫と彦星の年に一度の逢瀬の日
地上では、短冊に願い事を書いて笹に吊すという習慣がある



「ということで、みんなどんどん書いてね」

逸人の手にはたくさんの短冊
傍らには大きめの笹

「これ、わざわざ今日のために用意したのかよ?」

「うん、みんなにも七夕気分を味わってもらおうと思って」

呆れる藤に笑顔の逸人

お昼時の保健室はいつものように、いつものメンバーで賑わっていた

「先生、もしかしてその目の下のクマって…」

アシタバが短冊を見て、もう一度逸人を見る

「昨日短冊作りに徹夜しちゃって…ちょっと寝不足なんだ」


『ああ、やっぱり…』


そこにいる全員が納得する
この先生はこういう人だ


「わー!短冊書くのなんて何年ぶりだろー!」

「美っちゃんはなんて書くの?」

「もちろん『モテたい』に決まってんだろ!」

「ちょ、藤君なにその願い事!?」

「え?『アシタバと結婚する』だけど…なんか問題あるか?」

「も…問題はないけど…と、とにかく他のにして!!」

「えー」


机を囲んでわいわいと短冊を書き始める

「喜んでくれてよかった」

そんな無邪気な生徒たちを見て微笑む逸人
そんな逸人を見上げてシンヤが聞く

「先生はなんて書くんですか?」

「え?僕はね…ふふ、ヒミツ」



そう答えて笹に自分の短冊を吊す
そして 満足そうに笑った

「さて」

踵を返す

「みんな、書けたらこの笹に吊してね」

「はーい」




夏風に吹かれて笹がさわさわと揺れる 揺れる
赤 青 黄
鮮やかな短冊がぱたぱたと翻る




『みんながいつまでも 笑顔でいられますように
派出須 逸人』




どうか みんなの願い事が空に届きますように





end.
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