Novel

□夕闇の甘い罠
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「…んっ…ぁ、は…」

日が暮れて薄暗くなった保健室に喘ぎ声が響く


朦朧とする意識の中で聞いたそれは 紛れもなく僕のもので

「けい…いち…っ…」

もはや疲れ果てて掠れた声
下肢を襲う強すぎる快感から逃れようと経一の背中に手を回す

「逸人?大丈夫か?」

気にかけるように見下ろしてくる経一

「ん、へい…き…っ」

「そうか?痛かったら言えよ」

そう言って止めていた腰をまた動かし始める
下から突き上げられて、段々と薄れていく理性


「ふっ…ん…ぁ、も…もうむ…りっ…あぁっ!!」

「くっ…!!」

腹のあたりにじわりと熱が広がる
どうやら二人同時に果てたらしい
二人分の荒い息遣いが重なる



ふと経一を見上げる
その顔に疲労の色は薄い
逆に僕はもう腰が抜けてしばらく動けそうにない

『何この体力の差…』

軽く落ち込む
経一は昔からこういう奴だ


でも 今は昔よりもずっと体格がよくなったし、背も伸びた

浅黒い肌も 筋肉質の腕も
全てが『大人の男性』

まぁ僕も経一ももう20代後半だから当たり前だ
でも経一に比べれば、僕なんかまだまだ貧弱で

だからつい意識してしまうんだ


改めて経一の体を見てみる
そして思う

『男らしいなぁ』

思わず顔が熱くなる
顔の火照りは治まるどころか、どんどんひどくなっていく

「逸人、お前顔赤いぞ」

いきなり指摘されてびっくりする
顔が熱かったのはそのせいか

「べっ…別に大した事じゃ…」

「うそつけ。…なぁ、さっき何考えてたんだ?」

経一の瞳が僕を覗き込む
その視線がどうにもむずかゆくて目を逸らした


『経一に見とれてたなんて絶対に言えない…!!』


それでも、そんな顔で聞かれたら答えないわけにはいかないわけで




どうやら僕は経一の罠にかかってしまったらしい

一度はまったら逃げ出せない
それは甘い恋の罠




end.
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