Novel

□絶花療治の憂鬱 (絶→逸)
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俺は今非常にイライラしている



その元凶は



「あ、絶花先生おはようございます」


廊下でバッタリ鉢合わせ
にこやかに挨拶をかましてくるこいつ 派出須逸人だ

「…おはようございます」

嫌々ながらも仏頂面で、仕方なく返してやる

チッ…
心の中で舌打ちをした


この間の一件(第62診参照)以来どうにもこうにもこいつの顔が頭から離れねぇ

四六時中頭の中で同じセリフをリピートする




『「悩みを一蹴して欲しい子」と「助けてもらいに来た子」の区別すらつかないなら
カウンセラーなんて今すぐやめて下さい』




クソッ…胸くそ悪い
思い出しただけでイライラしてくる
というか、今のイライラが増してくる


大体何なんだ あいつは
なんで何もなかったかのように俺に接してくるんだ
普通、少しは気まずくなるもんだろ?



「絶花先生?」



我に返った時、目の前にあいつの顔があった
憂いを浮かべた瞳が俺を覗き込む



真っ直ぐな琥珀色の瞳
意外と長くて 細い睫毛
筋の通った鼻
ひび割れてはいるが、白くて滑らかな肌




間近で見たその顔は、思いのほか整っていて




とても 綺麗だと思った




なんだ この感情は




無駄に苦しい鼓動
あまりの激しさに息が浅くなる

何かがもどかしい
焦り?恐怖?どれも違う
なんだ これは





これは 恋?





『いやいや んなわけないだろ!!』


頭をぶんぶんと振って、下らない考えを必死に振り払おうとする

が、だめだ
全く振り払える気がしない



ああ くそ




『本当…あんたは何なんだよ…』




その時の俺は
とても俺らしくない俺だった
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