Novel

□Imitation Lovers.(兎虎前提兎黒虎)
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*兎虎前提
*兎が何気に酷い奴(?)です

...OK?

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「虎徹さん、今夜もタイガーを借りて帰っていいですか?」


―――ああ、またか。
内心そう思いつつ、またそんな事は微塵も表情に出さず、何でもない顔で返事をする。


「おお、別に構わねぇけど」


平静を装う。
実は内心はかなり焦っていたりするんだけど。
勿論表には出さない。
あくまで冷静に、全然平気なふりをして。


「ありがとうございます。彼と話をしていると、なんだか両親に近付いている気がして楽しいんですよね…」


返事を受けて、バニーがふわりと笑う。
きらきらした笑顔でそう言うもんだから、俺はそれ以上は何も言えなくなってしまう。
こういう時ハンサムって卑怯だ。


「へぇ…ま、借りていく分には全然問題無いんだけどな。あ、タイガーさえ良ければの話だけど」

自分で言っていて胸がズキズキ、チリチリと痛んだ。


―――嘘だ。そんなの、本当は戯言だ。
全然平気なんかじゃない。問題無い訳が無い。


ここ最近、バニーは毎日、毎夜のようにタイガーを自宅へ連れて帰る。
本人いわくタイガーと色々な事を話しているらしい。
―――あいつの元の製造者である両親のことをもっと知りたい、もっとよく理解したい、と。


バニーの気持ちは分からないでもない。むしろ当然の事だろう。
バニーにとってタイガーは両親の形見みたいなものでとても大切な存在だ。
そこまではいい。そこまでは別にいいんだ。
そう、最初の頃は思えていた。


でもバニーがタイガーを借りていく回数を重ねていく度、俺は段々不安になっていった。
本当に話をしているだけか、もしかしたらそれ以外の何かをしているのではないかと、変に勘繰るようになっちまった。

バニーを信じていない訳じゃない。
それでも、どうにも不安でたまらない。




だって、――――俺はバニーのことが好きだから。




いい年したおっさんが気持ち悪い。
そう思われても仕方がない。自分だって思ってる。
『俺はどこの乙女だ』って。

でもそれ以上に不安が勝って、辛くて、もう胸が張り裂けそうだ。


「じゃあ僕はお先に失礼します。お疲れ様でした。ほらタイガー、行こうか」
「今日も一緒なのか?別にいいけど」
「おう、おつかれー」


タイガーをつれてオフィスを出るバニーの背中にひらひらと軽く手を振る。



―――『待って』『行くな』なんて言えるはずもなく。
本心なんて、尚更口にできるはずもなく。


「……じゃあな……」


俺は今日もバニーを見送った。









-














「はっ、…あ、ぅあ…ばに、バニー!!」
「…っく…!!」


ギシギシと悲鳴をあげるベッド、薄暗い自室に二人分の喘ぎ声が響く。
首に腕を回し、必死に自分にしがみついてくる愛しい人の嬌声に、たまらず精を吐き出した。


「はぁ…」


アナルからずるりとペニスを抜き出すとどろりと精液が零れ出る。
普通ならば欲情するはずのそれに、思わず溜息が漏れた。



―――またやってしまった。



「なぁ、すっきりしたかよ?バニーちゃん」


言いようもない失望感と絶望感の余韻。
そんな中、タイガーが意味ありげににやにやと笑う。
つい鋭い視線で声の主を睨みつけた。


「うるさい。お前には関係無いことだ」
「おいおいそりゃねぇだろ。俺はお前が中に出したもので故障しないか毎回心配でならねぇってのに。お前の性欲処理に付き合うこっちの身にもなれよ」
「ふん、それなら誘った時に断ればいいだろ。僕は全く困らない」
「は、よく言うぜ。いつだって虎徹に欲情してるくせに」


タイガーが嘲るように、吐き捨てるように言った言葉が胸に突き刺さる。




―――そうだ。
「全く困らない」なんて所詮は上辺だけの嘘。
何も言い返せない。全て図星。




僕は虎徹さんが好きだ。
でも本人にそれを伝えるのが怖い。
「気持ち悪い」と思われ距離を置かれたりしたらきっと死ぬほど辛いから。





(…臆病者め)





心の底から自嘲する。





そして気付けば、僕は大きすぎる想いの矛先をタイガーに向けるようになっていた。

「話をする」という口実で家に連れ帰り、毎晩のように彼と同じ顔をしたアンドロイドを抱く。

僕が命じれば本物さながらに喘ぐし、見た目だって本物とそう変わらない。
つまり彼は僕にとって精巧に作られた"ラブドール"。

最低?
どうぞ好きに言ってくれて構わない。
本物の彼に―――虎徹さんに嫌われるよりはよっぽどマシだ。


「つか、俺も最初の頃より大分喘ぎ方とか上手くなったんじゃねぇ?慣れって恐ろしいもんだ」
「調子に乗るな。お前は僕にとってただの性欲処理の人形でしかないんだ」
「へぇ?じゃあその人形に入れ込んでんのはどこのどいつよ」
「僕だろうな。…でもそれでもいい」




それでもいいんだ




「はっ」と、嘲笑を含んだ声でタイガーがぽつりと呟く。


「とんだ人形愛好家だ」
「なんとでも言え。―――僕は」




虎徹さんに嫌われないのならば
虎徹さんを傷付けないで済むのならば
僕はなんだっていいんだ






「虎徹さん…」






「バニー…」

















(すれ違った想いは、未だ交わることの無いまま)





end.



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尻切れとんぼ\(^q^)/
毎度後味が微妙ですみません…
兎に気持ちを伝えられなくて悶々としてる虎と、虎に嫌われたくなくて、でもそれが逆に辛くて悩んで悩んだ末に海老ちゃんを虎の代わりに抱いちゃう兎…のつもりだったんですが、書いているうちにどんどん話が別の方向に…!!
予想外です。なんてこったい/(^o^)\


2012.3.22

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