Novel

□今でも君を愛してる (鏑木夫妻)
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お前への想いを綴った手紙を書き続けて5年。



直接届けることなんてできないから
書いては燃やして、空へと送り届けてやるんだ。



本当に届いているかなんて分からない。



それでも、まだお前を愛してるから。
お前を忘れてなんかいないから。



その証として書き続けるんだ。



「自己満足」だなんてお前は笑うかな。
「いい加減しつこい」なんて怒られちまうかもな。



でもさ、受け取るだけ受け取っておいてくれよ。

それだけで俺は満足だから。
返事も、要らないから。




空を仰いで、降り注ぐ日光の眩しさに目を細める。
清々しいくらいの快晴だ。



「こっちは今日もいい天気だぞ、友恵」



目頭が熱くなって視界が霞んだ。


マッチに火を灯して、封筒に近づける。


チリッ…
有機物が焦げる臭いが鼻をついて、封筒がパチパチと音をたてて燃えていく。

5年間見続けた光景。
いつしかこれが日課になっていた。




ふいに
さわりと風が頬を撫でた。



優しく吹いたそれはざわざわと木々を揺らして、燃えて灰になった封筒とともに再び虚空へ舞い上がる。



「…ちゃんと届けてくれよ」



誰にも聞こえないくらい小さな独り言は風にさらわれてどこかへ消えた。







お前への想いを綴った手紙を送り続けて6年目




返事はまだ来ない






(返事なんて、来るはずもなく)






end.



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2011.11.6

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