Novel

□初恋は悲恋でした (兎虎←折)
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ある日 僕は見てしまった。



トレーニングを終えた後、漏れ出ていた声に引き寄せられるように覗いた更衣室。


思わず息を飲んだ。



「やっ…ぁ、バニぃ…バニーっ…!!」

「くっ…虎徹さん…!!」



交わる二人。荒い息。

バーナビーさんと虎徹さんの情事を目撃してしまった。


殴られたような衝撃が頭に走って、心臓が早鐘を打つ。


響く嬌声、肉のぶつかり合う音。
虎徹さんの後孔に埋め込まれたバーナビーさんのペニスは深くまで入り込んでいて、動く度に接続部分からニチ、クチュ、という水音が漏れる。



見てはいけないと分かっていても、どうにも目が離せなかった。


いつもとは違う虎徹さんの表情が僕の心を捕らえて離さなかったからだ。


与えられる快感に溺れて、染まった恍惚の表情。
情欲に揺れる 焦点の定まらない深い琥珀色の瞳。
薄く開かれた唇は卑猥に光っていた。


酷く妖艶で艶かしくて、壮絶なまでに美しい。
それは東洋人特有のものなのか、はたまた虎徹さんの持つ魅力なのか。


どちらかなんて検討もつかない。
気づけばそんな虎徹さんに魅入っていた、ただそれだけのこと。


急に自分の中に何とも言えない感情が浮上した。



悲しいような
苦しいような
悔しいような
喪失感のような



色々な感情が混じりあった奇妙な感覚。


チリチリと胸を焦がす、これは何なのか。


『あれ…?』


不意に目から滴が零れて床に落ちた。
塩辛くて熱い、それは確かに自分の涙で。


ざわり、と
胸の奥が静かに疼く。




ああ、自覚してしまった。
気づいてしまった。




この奇妙な感情は虎徹さんへの恋心だったのだと。



バーナビーさんが虎徹さんを抱いているのを見て、もうこの想いを彼に伝えることはできないと理解した。

理解した途端、ダムが決壊したかのように涙が溢れだした。


「ふっ…うぅ…っ…」


止めどなく流れて、頬を伝う涙に混じって嗚咽が漏れる。



これが、失恋というものなのか。



「誰か居るんですか?」



更衣室のドア越しに、不意に響いたバーナビーさんの声。
突然の出来事に思わず肩を跳ねさせた。

どうやら泣き声が聞こえてしまったようだ。



急いで立ち上がって、もつれる足を必死に動かして、廊下を疾走。

息を荒げて、振り返らずに。









さよなら、僕の恋心。

(僕は貴方が好きでした)












「虎徹さん」




end.





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折虎を書こうとしたらいつの間にか兎虎←折に…^q^
読んで頂きありがとうございました!!



2011.9.21

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