Novel

□独占欲
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「貴方が欲しいんです」



押し倒して、面と向かってそう言ってやったら眉を下げて少し困ったような顔をされた。



「あのなぁバニーちゃん、俺には妻も子供もいるんだぜ?第一こんなおっさん相手にしても楽しくないだろ。それに、バニーちゃんなら俺なんかよりもっといい相手が…」

「黙って下さい」



そんな言葉 聞きたくもない。



否定の言葉を紡ぐ唇を己のそれで塞ぐ。



「貴方が何と言おうと、僕は貴方が欲しい」




欲しくてたまらない 愛しい人。



何も友恵さんのことを忘れろとは言わない。
過去を忘れろとも言わない。

ただバディとして 一人の男として

せめて現在(いま)の貴方が欲しい。




「お前って時々子供みたいな事言うんだな」




僕の頭を撫でたその手の温もり。
長年忘れかけていた人の温もりだった。
それは幼い頃に亡くした両親のものと似ていて何故だか酷く心が穏やかになった。



「まぁ…なんだ。俺を欲しがるってんなら、ちゃんと幸せにしてくれよ?バニーちゃん」



頬を紅く染めて、照れたように顔を背ける。


なんて殺し文句だ。
このままでは理性が持ちそうにない。


「勿論。僕は一度気に入った玩具は最後まで大切にする方なんです」

「俺は玩具と同じかよ」


ああ、今度は拗ねてしまった。
コロコロと変わる表情は本当に見ていて飽きない。


くすり、と笑って抱きしめる。



「一一いいえ」







玩具よりも
この世のどんなものよりも大切な








やっと手に入れた
愛しい愛しい
僕の恋人。







end.

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