Novel
□ラブ・コントローラー (虎兎)
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「なぁバニーちゃん」
「何ですか虎徹さん」
「んにゃ、呼んだだけ」
にやにやしながら言ってやったら、あからさまな溜め息をつかれた。
「まったく、貴方はどこの小学生ですか」
尖った口調とは裏腹にバニーの表情は穏やか。
出会った頃のしかめっ面が嘘みたいだ。
「え〜だって嬉しいんだもん、名前で呼んでくれんの」
ジェイクの一件以来バニーは俺のことを名前で呼ぶようになった。
別におじさんて呼ばれるのが嫌だった訳じゃない。
でもやっぱり名前で呼ばれた方が嬉しい訳で。
「ま、バニーちゃんはこれからもバニーちゃんだけど」
「僕はバーナビーですよ、おじさん」
ふっ と浮かべたその笑顔は正にハンサムという言葉が似合うきらきらしたもので、不覚にもドキッとしてしまった俺がいた。
この表情が自分だけに向けられてるっていうのは実はこの上無い幸せなんじゃないかと思う。
だって今世の中の女性に大人気の、バーナビー・ブルックスJrがいつも隣に居て、真っ直ぐな瞳で笑いかけてくれて、耳元で愛を囁くんだぜ?(すげぇストレートで、聞いてるこっちが恥ずかしくなるくらいベタで甘い言葉)
『…本当に、』
自分が男を好きになる日が来るなんて夢にも思わなかった。
バディで、ハンサムで、しかも年下の男を。
「どうかしたんですか?」
「ん?いや別にどうもしねぇけど」
勿論俺には家族がいる。
愛する人もいる。
娘もいる。
でも
「バニーちゃんは何か特別なんだよなぁ」
「は?」
「ん?いや、独り言」
「なんですかそれ…っ!!」
更に追及しようとバニーが開こうとした口を自分のそれで塞ぐ。
触れるだけの軽いキス。
そしてすぐに離してへらっと笑うとバニーは顔を真っ赤にした。
「なっ、何するんですか!!」
「ははっ顔真っ赤!!可愛いなぁ、バニーちゃん」
ああもう 本当に
どうやら思っていた以上に、俺はバニーに惚れてちまってるらしい。
素直じゃなくて
ツンデレで
可愛くて
年下のお前
そんなお前のことが俺は
「好きだよ」
end.