Novel(捧げ物)
□君+僕=LOVE? (T&B/兎虎+兎両親/15500HIT)
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*兎両親健在設定
*兎父視点
*両親と兎は同居してます
...ok?
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ゴッ…
鈍い、骨同士がぶつかり合う音と共に額に走った痛み
それと同時に視界が暗転する
一瞬、何が起こったのか分からなかった
理解した時には既に遅かった
ぐらぐらと明滅する意識の中、目の前に居た人物
それは
「俺…?」「私…?」
それは、あろう事か自分であった
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遡ること1時間前。
我が家にお客が来たことが今の状況に至るすべての発端だった。
「父さん、母さん、こちらが虎徹さんです」
「えーっと…どうも、鏑木・T・虎徹です」
バーナビーに紹介されたその男は被っていたハンチング帽子を脱いで、軽く頭を下げた。
ベストに深緑のカットシャツ、細身のスラックス。
琥珀色の垂れ目がちの瞳という彼の姿はどこかで見た覚えがある。
「君は…もしかしてワイルドタイガーかい?」
「え…ああ、そうです。何で分かったんです?」
"虎徹"と呼ばれた彼は驚いたように目を丸くする。
まさか自分の正体が見破られるなんて思っていなかった、と顔に大きく書いてあるようだった。
次から次へコロコロ変わる彼の表情に、つい ふ、と吹き出してしまった。
それを受けて彼が首を少し傾げる。
「あの、俺の顔に何かついてますか?」
眉を下げて不安げに問う。
ああ、また変わった。
「はは、いや、君は面白い人だなと思っただけなんだ。表情が豊かで実に面白い。私の言葉で気を悪くしたのなら謝ろう。すまないね」
右手を差し出す。
「歓迎するよ、虎徹くん」
***
「…で、こいつ本当、凄かったんすよ!男の俺でもかっこいいな〜なんて思っちゃったくらい!」
妻と私とバーナビー、そして虎徹くんの四人で囲む食卓の中、アルコールが入って上機嫌になった虎徹くんは、とある事件でのバーナビーの活躍を陽気に、自慢気に話している。
「もう、虎徹さんたら…それは言い過ぎですよ。虎徹さんだって十分かっこよかったです」
隣でバーナビーが照れくさそうに笑った。
その心底幸せそうな顔にこちらまで嬉しくなる。
けれど反面、長年この子を育ててきた親として、その笑顔にどこか違和感を感じたのも確かだった。
『バーナビーは、こんな顔で笑う子だったかな』
一見いつもと同じように笑っているように見えるが、眼差しが違う。
いつもならば翡翠の瞳を細めてふわりと笑うのだが、それが今日はどこかが違う。
具体的に「どこが」とは言えないが、「どこか」が違うのは明らかだ。
『…まぁ、気のせいか』
ワイングラスに口をつけた。
せっかくの食事の席なのに、考え事なんて無粋じゃないか。
ここは純粋に食事を楽しもう。
こうして楽しい時間は瞬く間に過ぎていった。
「あー…もう食えねぇ…」
「もう、食べ過ぎですよ虎徹さん。あんなにがっつくから」
「いやぁあんまりにも美味かったからつい…」
「あら、嬉しい事言ってくれるのね、鏑木さん」
食事を終え、和やかに談笑する。
虎徹くんもすっかり打ち解けたようだ。
「さて、そろそろ片づけましょうか。鏑木さん、そこのお皿を取って下さる?」
「あ、食器洗いなら俺がやりますよ」
妻が席を立とうとしたのを、虎徹くんが引き留めて再び椅子に座らせた。
「そんな、悪いわ」
「いーんですって!こんなに美味しいものご馳走してもらっちゃったんだし、これくらいさせて下さいよ」
屈託の無い笑顔でそう言っていそいそとキッチンへと向かう。
その足取りは軽く、少しうきうきしているようにも見えた。
手際良く食器を片づける彼の背中を見つめてバーナビーへ視線を移す。
「いい相棒を持ったな、バーナビー」
バーナビーは虎徹くんをちらと見てうっとりと微笑んだ。
「はい。彼はよく気づく人で、情に熱くて、とても優しくて…。いつも僕を支えてくれる大切な人ですよ」
一一"大切な人"
その一言が妙にひっかかったような、そんな気がした。
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