Novel(捧げ物)

□糖度200%(保神/絶逸)
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ある日のお昼時。
保健室はいつものように、いつものメンバーで賑わっていた。


「なぁアシタバ、俺のエビフライのしっぽとお前の唐揚げ交換しようぜ」

「よりによってしっぽ!!?」

「今日のアシタバの弁当旨そうだなー」

「あ、先生お茶運ぶの手伝いますよ!」


わいわいと和やかな雑談が場を満たす。
そんな雰囲気に、逸人の顔も自然とほころんでいた。



そんな中



「邪魔するぞ」


ガラッと派手な音を立ててドアを開けて保健室に入ってきたのは


「あれ?絶花先生。どうかしたんですか?」


スクールカウンセラーの絶花療治だった。


「書類整理中に紙で手を切っちまったんだ」

「そ、それは大変です!!手当をするのでこちらへどうぞ」


逸人に導かれるがままに、用意された椅子に歩み寄り、直後に逸人が手当を始めようと向かい合わせに座ってその手を取る。


「あぁ、結構深く切ってますね…菌が入ったら大変だ。絶花先生、今から消毒するので少し滲みますよ」


そう言って脱脂綿に消毒液を染み込ませ、患部へと持っていく。
途端にズキッという鈍い痛みが襲う。


「いっ…!!」

「あっ、すみません。痛かったですか?」

「だ、大丈夫だ!!」


口では否定しながらもその痛みは顔にしっかりと現れていた。

消毒が終わり、傷口に絆創膏が貼られていく。

そしてふと気付く


「アンタの手、綺麗だな」


突然の言葉に目を丸くすると同時に、逸人は照れて顔を赤くする。


「そ、そんなことないですよ!!ひびとか入ってるし、かさついてるし…」


あわあわと否定する逸人の手を絶花が捕らえる。


「そんな事ある。色白で、滑らかで、とても綺麗だと思うぞ」


握っていた手を離して、逸人の頬に触れた。
それは真っ赤に色づいたリンゴのようになっていて。


「顔だってそうだ。肌は綺麗だし、整った顔立ちをしてる。…アンタ、自分で気づいていないのか?」

「そんな、僕には勿体ない言葉…」


次々と紡がれる褒め言葉に、恥ずかしくて俯く。
そんな逸人の体に絶花が腕を回した。


「まぁ、そんな控えめなアンタも好きだけどな」

「…絶花先生…っ」


真っ赤な顔を上げた逸人を抱きしめて耳元で囁く。


「なぁ、名前で呼んでくれよ」

「…!!」


琥珀色の瞳が驚きと困惑に揺れた。
一瞬迷って、口を開きかけてまた閉じる。
それを数回繰り返してやっと、か細い声でその名を呼んだ。


「…療、治」

「何だ、逸人」

「…僕も、療治が好き……です」


嬉しそうに、少し照れくさそうに絶花が笑う。

二人は幸せそうに抱き合った。






「えっと…お取り込み中失礼ですが…」


申し訳なさそうに割り込んだアシタバの発言で、一気に現実に引き戻された。


そう、今はお昼時。
ここは保健室。
逸人と絶花だけでなく、勿論生徒たちも居るわけで。
つまりここに居る生徒たちは今の一部始終を見ていたわけで。

生徒の顔を順に見てみる。

少し困ったような顔をしているアシタバ君。
目を見開いて愕然としている藤君。
口を手で覆って唖然としている鏑木さん。
ただただ固まっている美作君。


全部見られていた



「う…うわあぁあぁぁあぁ!!!」



あまりの恥ずかしさに顔を真っ赤にして、脱兎の如く保健室を飛び出す逸人。
それを呆然と見送る絶花と生徒。




結局この日逸人は保健室には戻らず、家に直帰。
更に逸人と絶花の仲は学校中で密かな噂になったとさ。




めでたしめでたs((


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