Novel(捧げ物)

□俺が王子で あんたが姫で(保神/藤逸)
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ある日 いつものように芸術教科をさぼるため保健室に行くと、珍しいことに先生が寝ていた

しかも、俺がいつも使う窓際のベッドで


確かにあそこは寝心地が良い
ちょうどいいくらいに日が当たるし、少し窓を開ければ風が入って気持ちがいい

しかし、だからといって仕事熱心なあいつが勤務中に、しかもベッドで寝るなんてあり得ない
よほど疲れていたんだろうか


ふと視線をベッド横の机に移すと、処理に二・三日はかかるんじゃないかと思う程大きな書類の山

それを見て妙に納得した

『大方、徹夜して寝不足だろうな』

まぁ こいつらしいって言えばらしいけど


改めて先生を見てみる
穏やかで どこか幸せそうな寝顔

熟睡しているのか、頬をつついても、髪に触れて軽く引っ張ってみても、全く起きる気配が無い

『…無防備』


病的に白い肌が日光に照らされて美しく反射する
薄く開かれた唇が 酷く扇情的だった




ぎしり、とベッドが音をたてる

誘われるがままに、その唇にキスを落とした






わずかに瞼を震わせて先生が目を覚ます
綺麗な、まだ寝ぼけた琥珀色の瞳が俺を映した

「あれ?藤君…?もしかして僕寝ちゃってた?」

「おう、完全に寝てた」

そう返すと、先生は少し落ち込んだような様子で立ち上がって、そのままお茶をいれにシンクへと向かった





昔、小さい頃にこんな話を聞いたことがあった

魔女に騙されて毒リンゴを食べた一人の姫が、王子のキスで目を覚ますという話



「あんたって白雪姫みたいだな」

「え?何?」

「いや、こっちの話」



俺が王子で あんたが姫で



end.




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