企画
□どっちが好きなの (黒虎→虎←兎)
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翌日、虎徹の自宅。
「ちょっとタイガー!!いつまでそうしているつもりですか!!」
部屋にバーナビーの怒号が響く。
怒りの矛先は他でもない。
「あ?別にいいじゃねぇか。なぁ虎徹?」
「え?あ、いや…」
堂々とソファーに座り込むタイガー。
そしてその膝に座っている、虎徹。
困ったように眉を下げて、どうすればいいか分からないという風な顔でタイガーのされるがままになっている。
勿論好きでこんな状態になった訳ではない。
先日目が覚めてからというもの、タイガーは虎徹にべったりなのだ。
「だから!!それをやめろって言ってるんです!!」
バーナビーがタイガーを虎徹から引きはがそうとその腕を引っ張った。
が、虎徹はタイガーに腰に手を回されがっちりホールドされているため剥がそうにも剥がせない。
二人の間にバチバチと火花が散った。
どちらも無言で、虎徹を離さずに嫌な沈黙が流れ始めたそんな時。
「ちょ、痛っ!!痛いってバニーちゃん!!」
ずっとバーナビーに腕を引っ張られたままだったらしい虎徹が悲鳴を上げた。
どうやら本人が思っていたよりかなり強い力で握っていたようだ。
その声に我に返ったバーナビーがさっと手を離した。
「あ、す すみません…」
申し訳なさそうにしゅんとしているバーナビーを見てにやりと笑ったタイガーが、その隙に虎徹を自分の方に再び引き寄せた。
「男の嫉妬は醜いぜ。"バニーちゃん"」
「僕はバニーじゃなくてバーナビーです…って 何してるんですか!!」
憤慨するバーナビーを横目に虎徹の首筋に顔を埋めて軽く歯をたてた。
「んっ…!!」
ちり、という痛みが走りその痛みに虎徹が小さく声をあげる。
タイガーが顔を引くとそこにははっきりと赤く鬱血が認められた。
バーナビーにちらりと向けられたタイガーの視線。
『これは俺のもの』
その視線はそう言っているような、明らかに挑発的なものだった。
その瞬間
バーナビーの中で何かが切れる音がした。
タイガーに抱えられたままの虎徹を抱き上げるようにして引きはがす。
腕に収まった虎徹が助かったという風に息をつくと、その異様なオーラに気付いてバーナビーの顔を見上げた。
「え…と、バニーちゃん?」
あれ、おかしいな
眼鏡に光が反射して表情が読めないぞ
「…いい加減にして下さい」
あ、ヤバイ
その禍々しいオーラに虎徹が危険を察知した時には、もう遅かった。
「さっきから見ていれば好き放題…もう我慢できません。虎徹さんは僕の恋人です。手を出さないで下さい。潰しますよ」
(怖い!!
その笑顔は怖いってバニー!!
すごいハンサムスマイルだけど額に青筋たってるから!!
目が笑ってないから!!
そして語尾が不穏だから!!
頼むタイガー、これ以上バニーを怒らせないでくれ
おじさんそろそろ泣きそう)
「虎徹は誰のもんでもねぇだろうが、六角形眼鏡。返しやがれ」
(…っておいぃぃ!!!!
何言ってんだタイガー!!
バニーがキレるだろうが!!
あ、なんか目眩がしてきた)
向かい合う二人の間に不穏な空気が流れる。
双方滲む殺気を隠そうともしない。
そんな中
「ま…まぁまぁ、二人とも!!一回落ち着こうぜ?な?」
一触即発の雰囲気をなんとか和ませようとする。
が、それは逆効果だった。
睨み合っていたタイガーとバーナビーが虎徹に視線を移す。
「…虎徹さん」「…虎徹」
(あれ、なんかヤバイ気がする)
「貴方はどっちが好きなんですか」
「お前はどっちが好きなんだ」
突然突き付けられた思いもよらない二択に、虎徹は冷や汗が背中を伝うのを感じた。
色々と考えが頭を回る。
それはもうぐるぐると。
(バーナビーだと答えればタイガーがキレる
タイガーだと答えれば後ほど俺は確実にお仕置きされる
どっちに転んでも悪い展開だ)
そして長いこと考え抜いた末(とは言っても10秒くらい)
「お、俺は両方好きだぜ?バニーは俺の相棒だし、タイガーは俺の分身みたいなもんだし…なーんて…………ダメ?」
はは、と笑ってみせる。
けれど場の雰囲気が緩むことはない。
「そうですか…なら、仕方がないですね。」
バーナビーの言葉に、虎徹はぱあっと表情を明るくした。
「おぉ!!分かってくれるのかバニーちゃん!!」
ああ、よかった
どうやら悪い展開にはならなそうだ
「ええ。…どうやら虎徹さんの場合、体に聞くしかなさそうです」
「…へ?」
いやいや ちょっと待て
こいつ今何て言った?
「いや、あの、それは」
「貴方に決定権はありませんよ、虎徹さん」
「覚悟しろよ、虎徹」
ハンサムスマイルで不穏な事を言うバーナビーと、俺と同じ顔で笑うタイガー。
前言撤回。
どうやらこれから俺はとんでもない事になるらしい。