過去拍手文

□あいさい
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劇団の廊下を歩いていたら、前から長身のイケメンが歩いてきた。

奴はしばらく一緒に舞台に出ていた、私の良き弟のような人。




「お疲れ様です、ちえさん」

「お疲れ、りか」




爽やかな笑顔は変わらない。
次期トップの発表もあって、キラキラ輝いている感じやな。




「次期トップ、おめでとーな」

「ありがとうございます。ちえさんこそおめでとうございます」

「演劇賞?」

「いえ、結婚3周年」




にまって面白そうに笑う。
まったく。遊んでるだけや絶対。




「奥様どう?」

「奥様ってなんや」

「私ももうすぐお嫁ちゃんもらうんだよー」

「せやな。若いな」

「ふふ。いろいろしてもらおう」

「うわ。聞き捨てならん」

「ぐふふ」

「あかん。ちょっとりかのお嫁ちゃんのとこいかな」

「なんでよ」




がしっと腕を掴まれて、りかが必死に止めてた。

けらけら笑っていると、後ろから。




「ちえさんっ」

「おー、ねね」

「またりかさんと仲良ししてたんですかー」

「りか、怒られてるな」

「いや、怒られてるのはちえさんです」




ぷんとしてるくせに、その表情は笑っているようにも見える。

可愛らしい私の嫁。




「ねねちゃん元気?」

「はいっ。りかさん、次期トップおめでとうございます」

「ありがとう。ねねちゃんこそおめでとう」

「うふふー。ありがとうございます。これからもちえさんの隣でがんばります」

「ほら、ねねちゃんは分かってるよ?」

「やってねねは記念日忘れへん人やもん」

「あぁ、ひともんちゃくあった後か」

「もう聞いて下さい、ちえさんってば」

「ええやろーっ」

「あははっ」




まるであの時みたいに3人でけらけら笑い合う。




「りかのお嫁ちゃんも一緒に、今度4人でごはん行こう」

「いいですね。夫婦の極意を…」

「嫁の言うことを聞く」

「夫が可愛いと思ってくれる人になる」

「ねねちゃん可愛い。でもちえさんは違うでしょ。聞いてないでしょ」

「理想を話したまでや」

「現実は?」

「たまにキュンとさせる」

「フっ」

「鼻で笑うなぁー!」

「えへへ。ちえさん、今キュンしました」

「そんな喜ばんの」

「嬉しいんですもん」

「私を置いていちゃつかないでー」




ぎゃあぎゃあお喋りして、次のお仕事があるりかとバイバイした。




「ちえさん」

「んー?」

「私、もっともっとちえさんのこと好きになってます」

「…急に言わんの」

「うふふ」

「私もやでー」

「え?」

「え?」

「今なんて…」

「お腹すいたなー」

「違いますよね」

「さ、ねね、ご飯いこ」

「う…」

「行くの?行かんの?」

「行きます」




にこって笑うねねが可愛くて。




「ねねー」

「はーい」




いい子にお返事したねねをぎゅっと抱きしめた。

腕の中で、どんどん顔が赤くなって行く。

ふにふに笑いながら。




「大好き」




そう伝えたら、彼女はもっと愛しくなるような、嬉しそうな笑顔を見せてくれた。




END
 

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