11/21の日記

00:24
高尾誕生日に万歳(緑高)
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「えー?いいって、別に」

誕生日に何か欲しいものを教えろ、と尋ねたら「なにそれ直球!そして命令系、緑間ツレー」と散々爆笑した後にそう宣った高尾のいい位置にある頭を軽くはたく
いったい、といいながらまた笑い転げ始めるから、こいつの将来の死因はきっと笑い過ぎが原因の呼吸困難か何かだろう

「うるさい黙れ、早く欲しいものを言え」

「ぶふっ、だから、ふくく、いいってば、ひっ、笑いとまんね、」

一度ツボに入るとなかなか帰って来ない
いつもならこういう時は一旦放置して落ち着いたあたりにもう一度話すなりなんなりするのだが今回は時間がない
誕生日当日、部活終わりのロッカールーム
これからいそいで買いに行かないと店が閉まって仕舞う

「おい、バカみたいに笑ってないで早く白状するのだよ」

「白状って、ぶはっ、オレなんも悪ぃことしてねぇし」

とうとう手を止め笑い始めて仕舞って、着替えの最中で上半身裸なのに寒くないのかと気にかかるが腹筋運動中のため問題ないらしい
笑い上戸もいいが誕生日に風邪を引くなんてことになったらバカ過ぎて頭を抱える

「はやく服を着ろ、そしてはやく行くぞ」

「なに、どっか寄るの?」

目尻の涙を指で拭いながら、もう着替え終わりテーピングを巻くオレの方を向く

「あ、オレ巻きたい」

「まずは自分の準備をするのだよ」

別に任せてもいいが遅くなっては困るので断る
不満そうにしながらもYシャツにもそもそと袖を通し始めるので、もう一度早くしろと言っておいた

「それと、これからお前の誕生日プレゼントを買いに行くと言っているだろう」

先程の質問に返答する
高尾はYシャツのボタンを閉める手を止めぽかりとアホ面をして、へ?と間抜けな声を出した

「気の抜けるような顔をするな。だからお前は駄目なのだよ。それで、何が欲しい」

いい加減白状しろ
そう言うと

「だーから、いいって!真ちゃんの祝ってくれる気持ちがあればじゅーぶん!」

と先程より大きな声で宣い、少し眉を寄せてから着替えに戻り、
だから自主練しなかったのか
と呟いた

「自主練をしなかったのはそれだけの理由ではない。今日のおは朝で蟹座は8位と余りよくない上にラッキーナンバーは21、練習中に21本シュートを撃ったからなのだよ」

ちなみにラッキーアイテムはオレンジ色の鉛筆
勿論常に持ち歩いている、抜かりはない

「へー、さそり座は?」

「1位だ」

「うは、やった」

「ラッキーアイテムはかぼちゃの煮物だ」

「ラッキーアイテム料理かよ、あいっかわらずムチャクチャだな」

高尾は笑いながらそんな会話をしてロッカーを閉める

「じゃ、帰りますか」

「ああ。……いや、帰らんのだよ」

さらりと流されそうになり少し焦る
何故誕生日を祝われるのが嫌なのか見当がつかないが、チャリヤカーに乗れば行き先を決める権利は実質こいつにある(じゃんけんにはオレが勝つ)
乗る前に、行く店を決めておいた方がいい

「え?帰んないの真ちゃん」

「いや、結果として帰りはするがその前に」

「あ、おしるこ買って帰ろっか、寒いしね」

「あぁ。いや、だからお前は」

「えー?おしるこ飲むでしょ?真ちゃん」

「飲むが、」

いつもこうだ
高尾が本気になれば簡単に会話の主導権をとられオレは流される
だが今日は流されるわけには行かないため、オレも本気で掛かるしかない

「いい加減にしろ、高尾。お前は誕生日を祝われたくないのか?」

「えー?嬉しいよ、真ちゃんが祝ってくれるて。あんがと」

「だから、何かプレゼントをするのだよ、オレの誕生日の時にも貰ったしな」

「それさ」

高尾の声のトーンが少し下がる
もともと低いオレと違いこいつは音域が広くいつも高めの声で話す
低くなるのは、本気の時か怒っている時だ

「別にオレが真ちゃんに物あげたからってそれはオレがあげたかっただけで言っちゃえば自己満足だからさ、お返し欲しいわけじゃないし自分がプレゼント貰ったからって義務みたいにオレの誕生日祝ってくれなくていいから、別に祝ってもらって嬉しくないわけじゃないし何か貰っても嬉しいけどオレ的には貰いっぱなしは嫌だし逆に気ぃ遣うっつうかぶっちゃけ困るわけでさいや嬉しいんだけどね?でも祝うことは大好きだけど祝われるとか何かもらう何かしてもらうとかはちょっと障に合わないわけよやってあげる方が好きなのよオレ、だから敢えて誕生日に何かって言うなら真ちゃんの来年の誕生日も祝わせて、それだけ」

一息で言い切られたことに、よく一気にそれだけ言えるなと感心した後にゆっくりと内容を飲み込む
要するに何も欲しくないというわけか

行こうぜ、とロッカールームを半ば押し出されるようにして出て、薄暗い校舎を歩く

「無いのか、欲しいもの」

「だからいいってば、言ったじゃん」

校舎の外に出れば冷たい風が身体を冷やし、高尾はよく通る声で誰かに寒さを訴える

「寒いな」

「まだ11月だぜー?きつー」

「紫原のところでは雪が、」

「真ちゃん」

オレの言葉を遮り、少し前を歩いていた高尾がくるりとこちらを向いた

「ふたりなのに他のおとこのこと、」

話すなよ
と色を持って微笑む
チャリヤカーを止めているところまで行くと、帰りそびれた生徒も殆ど居らず、確かにオレ達は二人きり
わかっていて高尾はそうやって誘う
あくどい奴だ
オレが知るどんな奴よりも高尾は明るく賢くそれでいて性が悪い
そしてどんな奴より   と思って仕舞うオレは最早病院に行くべきだ
多分看護師からは黒い笑顔でお帰りくださいと言われるだろうが

「高尾、何もいらないのか」

「真ちゃんしつこーい」

「軽薄な言い方をするな。何もないのか」

「何それキスでもねだって欲しいわけ?なーんて、」

言い終わる前に望み通りにしてやった
そんな安上がりな誕生日プレゼントがあるか

「な」

先程の言葉の続きなのか、なんで、とか、なにする、とかの頭文字なのかはわからないが真っ赤な顔に少し満たされる
ついさっきまではバカみたいに笑っていたのに一気に変わる雰囲気に他人事のように感心する
雰囲気を変えたのはお前だ、オレは悪くない

「そういえば今日、家に両親がいないのだが」

「真ちゃんの家はいっつもそうじゃん、ってなんで今言うのなんでこのタイミングで言うの!?」

いいことわ思い付いたからなのだよ

「お前はさっき、一方的に貰いっぱなしなのが嫌だとか言っていたな」

「へ?あ、あぁ、うん」

「ならばオレがお前の誕生日を祝い、お前がオレに身体を寄越せばいいのだよ」

「…マジ意味わかんない真ちゃん節炸裂なうもう誰かどーにかして」

「いい案だと思うのだよ」

「マジかよ…」

しゃがみ込んで頭を抱える高尾に、だから早く欲しいものを言え、と今日何度目かの問い掛けをする
高尾は暫く顔を膝に埋め唸っていたが、オレも目の前にしゃがんでやると、ちらりと目だけこちらに向けて来た
結果的に上目遣いになる
性悪め

「じゃあさ」

「やっと言う気になったか」

「いっこだけ、あんだけど、いい?」

いい?のところで首を傾げる
あざとい
あくどい
性悪め

「何が欲しいのだよ。言ってみろ」

「いや、えっとね、欲しいとかじゃねぇっつうか…、物じゃねぇんだけど……」

高尾はまた腕に顔を隠し、暫くして決心したかのように顔を上げて言った

「髪の毛、触らして」

「……そんなことか?」

「だって、」

また顔が隠れる
恥ずかしがっているらしい

「………まぁいいが、」

やっと聞き出した唯一の願いがそれか
というかたまに断りもなく触って来るじゃないか、と言えば、それとは違い気がすむまでずっと触っていたいらしい
意味がわからない

「いいの?」

「いいが、お前は髪の毛を触るのが好きなのか?」

「変態みたいに言わないでよ、別に髪の毛フェチとかじゃないっつーか、緑間だけ…」

「そうなのか。なら他の奴の髪は触るな」

「えー」

「高尾妹のだけは許す」

「ぶは、許された、ひひっ」

何がおかしいのか笑って、オレが触りやすいように頭を差し出せばまた面白そうに高尾は笑った

そろりと伸びて来た手が恐る恐ると言った様子で頭を撫でる
初めて触るわけでもないのに、変な奴だ
大体、誕生日だから髪の毛触りたいという時点で変な奴なのだ

「高尾」

何故かオレまで照れてきたため誤魔化すように名前を呼んだら、高尾から頭を抱えられた
多分顔を髪に埋められている

「真ちゃん…、すき」

「高尾!」

「いった!」

いたたまれず立ち上がったら高尾の顎が頭にぶつかった
痛い
痛過ぎて思わずまたしゃがみ込む


「ちょ、真ちゃんごめん、大丈夫?」

「くそ痛いのだよ」

「わーっ!ごめん!!よく考えたら急に立つ真ちゃんが悪いわけでオレなんも悪くないけどごめんっ!!」

「お前のせいなのだよ!」

高尾も痛かったらしく、自分の顎を擦りながら、今度は労るように頭を撫でてくる
痛みが治まり始めて顔を上げれば、泣いてるような顔をした男と目が合った

「大丈夫?」

「まぁな。それより、早く帰るぞ、高尾」

「え、もう終わり?」

「こんなに寒いところにいられるか。顔だけ熱いのだよ。帰って風呂に入ってオレの髪を乾かせ」

「ぎゃ、デレた!心臓に悪すぎなんだけど」

バカ笑いする顔も真っ赤で、デレた、の意味に気付いて仕舞ったが出た言葉はもう取り返せない
いいから、と握った手を出せば高尾も目尻の涙を拭って手を出した

「「じゃーんけーん、」」



†END†


高尾君誕生日おめでとう
世界一のHSKに万歳!


 

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