SHORT
□遥かMH
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いつもと変わらない朝。
いつもと変わらない学校。
そして、いつもと変わらないお昼。
その昼休みが終わろうかという頃に、異変は起きた。
ミナは、政経の資料室内で。
フェルトは、屋上から階段を下りている途中で。
タキは、中庭でぼーっと座っている時に。
突然、どこからともなく真っ白い眩い光が視界を染める。
何だ何が起きたと慌てふためくそれぞれを嘲笑うかのように、光は輝く強さを増していく。
とうとう視界が真っ白になり、自分がどこにいるのか分からなくなる。
ゾクリ、と何かが這うような寒気がした。
その寒気は足元から徐々に上へ上へと登ってくる。
「……っ」
あまりの恐怖に、声を抑える限界に達したその時、
一気に視界が開けた。
♢ ♢ ♢
「……え?」
目を開けたとき、目の前に広がるのは大自然だった。
光に包まれるというあり得ない事態に見舞われた時点で無事にその場にいるとは思っていなかったが、冷静なタキにとってもこの状況はいろいろと想像のななめ上である。
率直な感想としては、なぜ大自然なのだ。とその一言に尽きる。
どう考えても、誰かの思惑でこの大自然に飛ばされたのだろう。その誰かに対する苛立ちが心の中で大きくなっていくが、それはいったん奥底に閉まうこととして、タキを連れていくなら室内の方がいいに決まっている。
なぜかと言えば、タキが使っている武器、鎌の一番の強みはその長い長いリーチである。
フェルトのパートナー、ユウトの長刀もなかなかのリーチを誇るが、比べても決して負けはしない。
リーチで鎌が勝つならば、攻撃の際の力比べではどうなのかというと、純粋な力で比べればまず鎌が押し負けることはない。勢いをつけて振り下ろすという鎌独特の攻撃方法により、長刀を弾き飛ばす勢いである。
要は、この鎌という武器は死神の武器として使われていることからも分かるように、攻撃力において最強の部類に属する武器である。
そんな武器の使い手を、大自然に放り出すなど、相手にとっては不利中の不利に値する。
だからこそ、なぜ大自然に連れてこられたのかが疑問なのである。
タキは大木の下に腰かけるという、ここに飛ばされてきた体制のまま、うーん?と首をかしげる。
今は制服であるものの、指輪もピアスもそのままついている。つまりいつでも戦闘態勢になれる。
ますますここに連れてこられた訳が分からないが、なんにしてもじっとしているのは性に合わない。
とりあえず移動するか、とタキは立ち上がった。