SHORT
□×sngk
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「…うわー、これは予想以上」
目の前に広がるのは、地平線が見えるほどの広大な大地。
緑は適度にあり、うさぎなどの小動物もある程度見られる。
けれど。
(ほんとに人がいないなぁ……)
ていうか、そもそもなんで俺はここにいるんだっけ。
それは、おとといのこと。
「君への任務だ」
上に呼び出され、俺にしては珍しく礼儀を正して部屋に入ったというのに、待っていたのはそんなぶっきらぼうな言葉。
それだったらいつも通りでよかったじゃん、と思いながらも数枚の書類の束を受け取る。
表紙をめくってパラパラ見ていると、まず目に留まったのが任務期間の異常な長さ。
「…長くないですか。なんですか2年って」
「行く先がまず異常なんだ、長さは仕方ないだろう」
行き先ねぇ。
スーツをかっちりと着こなした人物にそう言われ、とりあえず渡された書類から行き先の行方を探してみる。
「……は?」
思わずそんな間抜けな声が出た。
それも仕方ないだろう、だってそこに書いてあったのは。
「異世界だ、その世界には安全に送れるからそこは心配しなくていい」
「あ―……なにかの冗談ですか?」
そう聞いた俺は悪くないと思う。
異世界?そんなものは漫画でしか見たことがない。
「そんなことがあるとでも思うか?」
「…やっぱそうっスか。ふーん…異世界。実在してたとはびっくりっス」
エドガーはまた書類をめくり、今度は任務対象者を探す。
誰と一緒に行くのかは、結構…というかかなり死活問題だ。
1枚目の上から数行目に目的のものを発見した。
そこに書いてあったのは、なんと「不明」の2文字。
これには大抵のことを受け入れる自信のあるエドガーでも、さすがに首をかしげる。
「任務対象者不明ってどういうことですか?」
「異世界への扉を開くのはそれなりにリスクがあってね。反動で誰が連れていかれるか分からない。魔道師を集めて可能な限り防御壁をはってはもらうが、そればかりは向こうに着いてから臨機応変に頼む」
「そうですか、分かりました」
「あと、これだけは言っておく。必ず、生きて帰ってこい」
「……了解です」
上の人間が重い空気でそう言う。
それにどのような意味が込められているかなど分かるはずもなく、エドガーはただ儀礼的に返事をしただけだった。