SHORT

□ピアス
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部屋で寝ころびながら、興味もない雑誌に目を通す。
モデルを見て、ひょろいなぁ…と思う。
こんなんで仕事があるんだから、うらやましい。

頬杖をついたまま、ページをめくる。


時計を見れば、2時。
そろそろ来るだろう。

のそのそを身を起こしたとき、部屋のチャイム
が鳴った。

あー来た来た、と頭を掻きながらドアへと向かった。

誰かなんて分かりきっているから、何も応えずにドアを開ける。


開ければ、予想通り ほら



「ショウ!!」

満面の笑みのフェルトがいた。

しかも俺を見た途端に遠慮なしに抱き着いてくる。
それを簡単に受け止めると、フェルトはまた嬉しそうに笑った。


「おはよ!」

「こんにちは、な」

あいかわらず訳分かんねぇな、と俺よりだいぶ低い頭に手を置く。

「ほら、鍵閉めてさっさと上がれ」

「はーい」

俺はフェルトに背を向けて一足先に部屋へと入る。
お茶でいいだろ、と自己完結しながら冷蔵庫を開けた。


コップに氷をいくつか入れていると、フェルトが部屋に入ってくるのが見えた。

ソファに直行して、ちょこんと座っている。
かわいいとか思ってないんだからな、畜生。

お茶を注げば、カランと氷が音を立てる。
2つコップを持つと、フェルトのところまで歩いていき、ほれと1つ差し出した。

「ありがと!」

「おぅ」

フェルトの隣に腰を下ろす。
ソファが鈍いスプリング音を立てた。

「ショウってさ、当たり前みたいに私の隣に座るよね」

「あ?ん、嫌か?」

向かいにもソファがある。
こいつの考えることはよく分かんねぇからな、と腰を浮かせる準備をする。

「ううん、嬉しい」

と、予想と正反対の答えが返ってきた。

「……お前ってよく分かんね」

「ショウはもっと女心を学んだ方が……いや、学ばない方がいいかな」

「?」

は?という顔を浮かべる。

「そのままでいーよ、ずっと私のこと分かんなくて」

そう言うフェルトはすごく嬉しそうで、やっぱ意味分かんね…と思う。

まぁでもこいつが嬉しそうならいいか、と考えてしまう自分はずいぶん重症なんだろう。

「ま、ずっと一緒にいりゃいつか分かんだろ」

「えっ」

「?」

いつも通り話していたつもりが、急に過剰反応される。
なんだ?と思って顔を覗き込めば、しばらく見ていない真っ赤な顔がそこにあった。

しかも、金魚のように口をパクパクさせている。

「…?」

  
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