SHORT

□ずっと、傍に -短編-
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「え…?」

「だから、今言ったであろう。
お前を、我が妻に決めたと。光栄に思え」

そう言って、王子は赤色のマントを翻して後ろを向く。

「異論は無いな?」

「「「はっ」」」

後ろに並んで膝をついている側近たちが、王子に頭を下げる。

王子は、その様を満足気に眺めた。

「良いな、娘よ。
貴様、名をなんという」

(名前を聞くときは自分が名乗るのが先でしょっ…!)

ミナは、その思いを胸にしまう。
相手は、この国の王子。

どう考えても、ミナが悪いようにしか転ばない。

「…私、お付き合いしてる人が」

「そのようなものは関係ない。
我が言うことは絶対だ。貴様もその程度は分かっておろう。
もう一度問う。名はなんという」

「……ミナ・シャーロット、です」

「そうか。
では、ミナよ。一週間、時間を与えよう。その間に、王族に加わる決意を固めておけ」

「………」

「なにか異論でもあるのか」

「…いえ、」

「ならば、よいな」

「……は、い」


ミナの返事を確認すると、王子はその場から離れる。
そのあとを、側近がついていった。

そこにあった人だかりが、王子が歩く道が開けるために分かれていく。


「…ミナ、あんた…どうするの?」

「…王子、だから……
私は、逆らえない………」

回りから、さすがミスコンだとか、仕方がないとか、うらやましいとかいった声が聞こえてくる。

(…いやだ、行きたくない)

けれど、


どうしようも、ない


  
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