SHORT
□タキの日々
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「タキさん、タキさん」
「…なに」
今、あたしの目の前にいるのはここ数日ずっとあたしに話しかけてくる男の子。
学校でそこそこ人気のある、俗にいう「かっこいい」部類に入る人らしい。
あんたがしつこく話しかけてくるせいで、最近あたしに謎の嫌がらせがくるんだ。勘弁してくれ。
「俺の名前、憶えてくれた!?」
「…あんだけしつこく言われりゃーな。ロールだろ」
途端にそいつは目を輝かせて、前の席に座りだす。
そこ、お前の席じゃないだろ。座んな。
「ね、タキさんってどこらへんに住んでんの?」
あぁ、うっとおしい。
個人情報だろ、それ。
目を細めてロールを見るが、そいつは気にしないでニコニコしている。
神経が図太いのか、ただのバカなのか、それとも確信犯か。
「学校の近く」
「そうなの!?徒歩何分?」
「…てかさ、それ聞いてどうするわけ?」
「どうもしないよ。俺がただタキさんのこと知りたいだけ」
また、そいつはニコニコする。
何が楽しいんだよ、意味分かんない。
一人にしてよ。
「はっきり言って、メーワクなの。そういう風に探られんの、好きじゃない」
「そんなこと言わないでって!
うっとおしいならさ、タキさんは俺のこと利用すればいいよ。こんなうるさいのと一緒にいたら友達たくさんできるって。ね?」
「……」
要するに、あたしには友達がいないから俺を介して友達を作れと。
で、自分はあたしのそばにいたいと。
なんて、自分勝手な人。
「あたしは、ここに友達作りに来てるんじゃないの。そういうのには、興味ない」
「勉強しに来たの?確かにここ、偏差値は高いからね!タキさん、この間のテスト順位TOP5に入ってたよな!?ほんとスゲー」
話がコロコロ変わっていく。
ほんと、この人何がしたくてあたしのとこに来てんだか。
「……あんたさ、あたしといて疲れないわけ?」
「当たり前じゃん!ちょー楽しいよ!」