SHORT
□記憶
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「…どうしたの、本当に。君らしくない」
「いや、何でもない。大丈夫だ」
イスカは、するりと俺から離れると、立ち上がった。
そして林を見上げる。
「ちょっと記憶が曖昧なんだけど…ここはどこなのかな?」
「ねぇ、剣士部隊長さん」
頭が、真っ白になった。
「……は…?」
「僕は君と、何をしてたんだっけ?」
「イスカ…、お前、ここがどこか分かるか?」
「分からないから聞いてるんじゃない」
「違う、国だ」
「何でそんなこと聞くわけ?」
イスカの気が、一気に鋭くなった。
この反応は、絶対だ。
あの魔術師は、イスカの記憶を全部消したんだろう。
しかしそれは、今世の記憶のみ。
前世の記憶までは、影響しなかった。
だから、前世の記憶のみが残った。