SHORT
□記憶
3ページ/16ページ
近くにあった林に、少し入ったあたりで、イスカを下ろす。
携帯電話は持っている。
いつでもリンに連絡はできるが、とりあえずそれはイスカの容態を確認してからでいい。
「…イスカ」
肩に手をあて、少し強めに揺さぶる。
毒を盛られたわけではないのだから、問題ないだろう。
何度か名前を呼んだころ、イスカの目蓋がピクリと動いた。
「イスカ!」
「……ぅ?」
イスカが、赤い目を覗かせる。
「起きたか、よかった。大丈夫か?」
「…なにしてるの?」
「自分の名前、分かるか?」
イスカは、何言ってるの?といった顔をする。
その様子では、大丈夫だろうと一安心した。
「イスカ・リーベルト、だけど」
「俺は?」
「ショウ・ザフェル」
「よかった…!」
思わず、イスカを抱きしめた。
本当に、どうなるかと思った。