SHORT
□記憶
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「っ!」
ショウは、イスカを放りおとした敵に殴りかかる。
いつもより焦っていたんだろうか、その拳は空をきった。
「用は済んだ、帰るぞ」
そう言って、テレポートに入ろうとする敵を、なぎ倒して地面に抑えつけた。
持っていた小型のナイフを、喉に突きつける。
「イスカに何をした…!」
「記憶を飛ばしただけだ。殺さなくとも、魔法も何も全て忘れてしまえば関係ないからな」
ナイフを突きつけられているのを気にも止めず、敵は不敵な笑みを浮かべる。
「私の仕事はここまでだ。ではな」
ショウを、衝撃波で吹き飛ばす。
放り出された先で、受け身をとって起き上がったときには、そこにもう敵の姿は無かった。
周りを見れば、そこにいた敵の気配も全てなくなっている。
(記憶…?)
記憶を飛ばした?
そんなことが、できるのだろうか。
いや、前に見たことがあった。
イスカが、敵の記憶を飛ばしたのを。
(…ウソじゃ、ない?)
それに、さっき言っていた、
『俺の仕事はここまで』
なら、先があるということか?
それに何より、ここに長くいては危ない気がする。
俺はテレポートは使えない。
もちろん、テレパシーも。
とにかく、ここから離れるしかない。
気を失ったままのイスカを背負う。
そばにあった窓から外を見ると、2階であることが分かる。
これならいける、と思って飛び降りた。