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「火神君、火神君よ。
 もうすぐ、というよりあと5分程で年が明けるワケだが、年内最後のお願いを聴いてもらってはくれないだろうか」

「え?」



 俺がさっき二人で食べ終えたばかりの蕎麦の器を洗っていると、フローリングに敷いた毛布を上でくねくねしながら、先輩は珍しいことを口にした。お願い。今年最後というか、それ今年最初だろ多分。

 先輩は学業優秀スポーツ万能、更に人望も厚く容姿もいい。いろいろパラメータを間違えて生まれてきた存在であるからか、大抵のことが一人で出来てしまう。いや、寧ろ全部。
 そのせいか、人に頼るということをあまりしない。

 正直、彼氏としては頼ってほしい部分もあるんだけどな…そう言うとコイツは



「なんだ火神君、頼ってほしかったのか!そうか、そうか。不覚だった、気付かなかったよ。
 よし、ならば頼らせろ。私を、思う存分甘えさせろ!!」



 …と面倒なことになるのは目に見えている。
 
 まあ、それは置いておいて、珍しくそんなおねだりのようなことを言ってきたことに嬉しくなって、「聴くかどうかは別にして言ってみろよ」なんて思ってもなことを言ってしまう。どんなことでも聴くんだろ、どうせ俺は(クソ、結局ベタ惚れじゃねえか)



「年が変わる瞬間に、キミとひとつでいたい」
「…は」
「…あぁ、高校生には分かりにくかったか?性行為、所謂セッ――」

「言わなくていい!!つうか、アンタも高校生だろ!!」



 聴いてるこっちが恥ずかしいわ!!言ってる先輩本人が恥ずかしいなんて様子が微塵もなくて、それが、俺を更に恥ずかしくさせる。








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