短文

□とても平凡で、
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私と彼…黄瀬涼太は恋人関係にある。

バスケは勿論、モデルもこなす彼みたいな凄い人と何処で知り合ったのかを訊かれれば、これはもう「偶然」としか言えない。

海常高校に通う弟に忘れ物を届けに行った時、職員室への道を訊いたのが偶々彼だっただけなのだから。




『あんなナンパの仕方、誰に教わったの?』

「内緒ッス。…グッときたッスか?」




平凡で取り柄もない私が何故彼の目に留まったかは詳しく話したことはないけど。

一目惚れなんて漫画みたいなことを、私は涼太から聞かされた。会ったその日に。




『格好良すぎるくらいだけど、私以外のコにやったら怒るからね』

「当たり前ッス!!真城っちこそ、俺以外のヤツにあんな風に誘われても返事しちゃダメッスよ?」

『ふふっ…うん、分かったよ』




そう言うと、涼太は嬉しそうにキラキラと笑う。

つられて私も笑うと、繋いだ手に込められる力が強まった。

少し薄暗くなった空の下を数分歩き、私達は脚を止めた。


賑やかな街並みから少し離れた所にあるマンション。

此処で、私達は暮らしている。

一応私の方が歳上だし、成人済みということもあって名義は私になってる一室。

涼太が通う海常高校からは少し遠いにも関わらず、彼は




「俺、仕事もあって忙しいから…なるべく、真城っちと一緒にいたいんス」




なんて可愛いことを言うから、ついつい許可してしまったのだが…

高校生モデルが恋人と同棲なんて、バレたら普通に大スキャンダルだ。

出入りはかなり気を使う。




『それじゃあ、涼太先に部屋行ってて。私少し間置いて入るから…』

「えっ、で、でも!真城っちだって疲れてるだろうし、お先どうぞッス!!」

『む。それを言ったら涼太だって、部活あったんでしょ?』

「どーってことないッス。さ、真城っちから、」




なんて言い合いの末、結局毎回ジャンケンになる。

今日は私が負けてしまったので、納得いかないも渋々マンションへ入る。

暗証番号を慣れた手つきで入力。解錠するとエレベーターで最上階まで。




『……はあ』




今日何度目かの溜息が零れた。

此処最近、気が付けばいつもそうだ。



“今月はバースデースペシャル特集”



本屋で見たその煽りが頭から離れない。

雑誌で特集にあった通り、今月18日は、涼太の誕生日なのだ。


そう、今日だ。


勿論、朝一番におめでとうは言った。誰よりも早く祝った。

けど、それだけの彼女なんて有り得ない。

誕生日という特別な日なのだから、もっと喜ばせてあげたい。

その一心で、奮発してプレゼントを買った。




(…喜んでくれる、かな)




最上階にたどり着き、頭を悩ませながら部屋の前に来る。

ここでもまたナンバー式のロックを解除して、ようやく我が家へ帰宅した。

梅雨特有のじめじめとした感覚に、たまらず私はエアコンで「除湿」を選択。




『うーん…』




引き出しにしまっていた箱を取り出して、一人睨めっこを開始する。

空色の包装紙に、黄色のリボン。

中身はかなり時間をかけて――店員さんの協力の下――選んだ涼太へのプレゼントがある。


きっと彼のことだから、いろんな人にプレゼント貰ってるんだろうな…

彼が持っていた大きすぎる紙袋を思い出して、また溜息を吐く。



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