短文
□とても平凡で、
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帰り道で立ち寄った本屋で、昨日発売したばかりの雑誌を手に取る。
表紙で挑発気味に笑う彼に思わず笑ってしまい、慌てて抑えた。(周りの人からの「何だコイツ」みたいな目が痛い)
ふうと短く息を吐いて、もう一度見る。
―――現役バスケットボールプレイヤー・黄瀬涼太!!
―――今月はバースデースペシャル特集
『………はあ』
また、周囲の視線が集まる。
笑ったり落ち込んだり忙しい女だと思われているのかもしれない。
結局雑誌は購入せず、適当な基準で選んだ参考書数冊をレジへ。
240円のお釣りをくれた可愛い店員さんに『10円多いですよ』と言うと、彼女はあっと慌てて頭を下げる。
初々しい。
多分、まだ高校生になったばかりで――人生初のバイトに挑戦してます、って感じだ。
(彼と同い年)
ということは私より3つか4つ下か、なんてボーっと考える。
手首の腕時計で時間を確認し、買ったばかりの参考書を抱え直すと、私は歩きだした。
少し急がないと、夕飯の時間に間に合わない。
育ち盛りの高校生の為に沢山作らなくては…
「おねーサンっ」
と、早足で歩く私の背後から声がする。
振り向こうとするもそんな暇なく、後ろから抱き締められた。
「可愛いッスね。どっかでお茶しないッスか?」
ホールドされた状態で上目に声の主を見る。
ブレザーには不釣り合いなキャップを深く被り、淡い青色のサングラスまで着用していた。
――その合間に見える鮮やかな金髪と同色の瞳に、私は微笑んだ。
包み込むよう肩に回された腕に触れ、
『はい。是非ご一緒させてください』
なんて言って、二人で同時に吹き出した。
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