短文

□ハッピーリスクバースデー
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とある攘夷浪士の拠点を調査する密偵の役目を終え、屯所に帰還した俺、山崎退。

その報告を上司の土方副長に告げれば、休む間もなく次の仕事が寄越された。




「真城を、探れ」

「………………はい?」






ハッピーリスクバースデー







坂田真城は真選組唯一の女隊士であり――副長の恋人。

万事屋の旦那の妹という事もあり、最初は顔を合わせるだけで喧嘩だったのに…。

あの二人をみると、人間って変わるもんだなあとしみじみと思う。


そんな彼女を、探れ?




「最近オレに隠れてコソコソしてやがるんだよ…あの野郎っ…」

「野郎って…仮にも女の子ですよ」

「かっ仮にもって何だよ!!あいつァ……

…つべこべ言うんじゃねェ!!いいから、」


『失礼しまーす。追加書類持ってきてやったよーん』




部屋の主人の確認もなしに軽い調子で入って来たのは、話にあった真城ちゃん本人。

顔は両手に抱えた書類のせいで全然見えないけど、そもそも女の子が一人しかいないので確認するまでもない。

副長はチッと舌打ちすると、立ち上がり、真城ちゃんの前に立って、




「ったく…言やァ取りに行ったのによ…」

『副長殿のお手を煩わせるワケにゃいかないっしょー。ていうかこっちにくるな。座れ、手を動かして書類だけ見つめてろ』

「……」




成る程、確かに変だ。

真城ちゃんは基本的にあんな感じで飄々としてるけど…副長に優しくされたら、可愛らしい反応をしていたのに。

最近で言うところの、所謂クーデレ。

そんな彼女が、デレない。

俺達に直接的な被害こそないが、副長へのストレスとなり八つ当たりされるのは御免だ。




『そんじゃアタシも行きますわ。見回りも当番だし』

「ま、待てよ真城っ!!」

『山崎も休みなよ?昨日の夜帰ったばっかなんだろ…ふぁー…ねむた…』




大きな欠伸をして頭を掻くと、彼女は副長を無視して去って言った。

……。

ちらりと、副長に目をやる。




「…………」

「あ、あの…副長?」

「……最近なァ…キスもしてねえんだ…」

「そ、そんな遠い目しないでください!ちゃんと調べますからっ!!」




ていうか仕事しろ!!

流石にそこまで言えなかったけど、このままでは本当に仕事が手に付かなくなるだろう。

相手は、原因は、あの真城ちゃん。

旦那曰く「月一で紹介される彼氏はいつも違うからね?うちの妹、銀さんに負けず劣らずの遊び人だからね?可愛いからいいけど」らしい。

副長と付き合い初めて、そろそろ3ヶ月…

もしかしたら彼女に飽きが来たのかもしれない。




(……とは言っても)




フラフラと歩く真城ちゃんの背を見て、罪悪感が頭を過る。

仲間を尾行するって、正直気分がいいものではない。しかも、疑って、だ。

その迷いを首を振って掻き消すと、俺は再び真城ちゃんを追って――――




『なにしてんだ山崎コノヤロー』

「ウワァアアアァァ!!?」

『しっかしお前尾行へたっぴだな。ダメだぞ、監察のくせに』

「あ、ご、ごめん…じゃなくて!!」




気付かれてた!!

突如背後から聞こえた真城ちゃんの声に飛び上がる。

考えてみれば、普段誰よりも気配に敏感な彼女をそう易々とつけれるハズがなかった…

「いや、あの、これは、」とかなんとか言い訳を探して慌てる俺に、溜息を吐いた。




『どうせ十四郎さんだろ?』

「!」

『ハァ…上司命令な。今すぐ屯所に急行。それから…十四郎さんに伝言。

――今日が何日か思い出してみろ、って』


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