短文

□エイプリル・ラバー
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「……っは、」

『ん、ふぁっ!!な、なな何するんですかっ!?』

「渡さねェ」

『え?』


「テメェなんぞに、コイツは渡さねェと覚えとけ」




ぎゅっと、抱き締められた。

そう言う副長の視線の先には、沖田隊長。

状況に頭がついて行ってない。

まさか、副長もエイプリルフール返しをしているのだろうか?


突然の事に混乱して、逆に冷静になり始めてる私を一瞥して、沖田隊長はニヤリと笑った。




「あれェ?土方さんどうしたんですかィ?」

「あァ?」

「今日はエイプリルフールですぜ?まさか、俺達の嘘を真に受けやした?」

「っ!!!」

『ふ、ふくちよ…?』




見上げた副長は、真っ青になったかと思えば、真っ赤になった。

沖田隊長の表情から読み解くに、沖田隊長にとってこの状況は予想の範囲内のようだ。

……収拾が、ついてない。




「俺ァ仕事に戻りやす。お幸せに、お二方」

「ま、待て総吾っ!!!」

『ふ、副長…どういう事ですかぁ?私だけ取り残された感が…』

「あ、あのなぁ……」


『副長は…私の事を好いてくれてるんですか…?嘘じゃ、なくて?』




言ってる自分が恥ずかしくなって顔を背けると、土方さんは指先を私の顎に添えた。

そのまま、簡単にくいっと視線が合わされる。

触れるだけの、優しいキス。




「俺は…冗談でキスなんかしねェ」

『…、…?』

「…顔真っ赤だぞ」

『そ、その言葉、そのままそっくりお返しします』



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