短文

□エイプリル・ラバー
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「総吾と結婚するだと?」

『はい…副長にはお世話になりましたし、一応ご報告を…』

「なんで総吾は来てねェんだ」

「俺なら此処にいやすぜィ、土方さん」




私とのやり取りに入ってきた沖田隊長は、心なしかいつもよりイキイキとして見えた。

ああ…楽しいんだろうなあ、副長の事からかうの…。

各言う私も、実はノリノリだ。





「俺と婚姻を結んだ事って、土方さんに嘘を言って欲しいンでさァ」





そう言われた時は、心底驚いた。

あの副長にそんな事をしたら…絶対に切腹になるだろう。


が、しかし。





「心配いらねェ…今日はエイプリルフール」

「謝れば許してくれやす、多分」






最後の多分が気になるが…

本日は4月1日。

エイプリルフール。


嘘を吐いても怒られないという、一体誰の為に作られたのか分からないふざけた日。

それが、今日。




「話は聴いたでしょう?俺達、結婚しやすんで」

「ま、待て、総吾…そんないきなり、」

「まだ籍は入れれやせんが、時がくれば。なァ?」

『沖田隊長…いいえ、総吾さん…!』


「―――――っ!!!」




視界が急にブレたと思ったら、副長に勢いよく腕を引かれたらしい。

突然距離を詰められ驚いている私の唇に、暖かいものが触れた。

至近距離の、副長の顔。

……え?




『っ、むぅ…!?』

「…………」

『んん…っ』




キス、されてる?

その答えに辿り着くのに、かなりの時間を要した。

それだけ、今のこの状況が驚きに値するかを語っていた。



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