短文
□何倍返し?
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『銀ちゃーん』
「なーに、なまえちゃん」
『今日…何の日か分かってる?』
「…何の日だっけ」
わざと、とぼけて見せる。
俺がそう返すとなまえは、『そ、そっか…』と肩を落とす。
だって、仕方ないだろ。
朝からずっとそわそわするなまえちゃんが可愛いんだから。
今日は、3月14日。
ホワイトデー。
『こんな早くの時間から何しに来たかと思えば…さっきからジャンプ読んでるだけじゃん』
「なまえちゃんも読む?」
『今週のはもう読んだ』
「違うよぉ〜。銀さんの膝の上で、銀さんが読み聞かせてあげるんだよ?」
『っ、なななな』
「ん。おいで」
ソファに寝そべっていた身体を起こし座り直すと、開いて座った脚の間をポンポンと叩いた。
真っ赤になったなまえちゃんは、一度きょろきょろと視線を泳がせた。
と、躊躇いがちに俺の傍にすり寄って来た。
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