短文
□やや控えめな姿勢で、
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(!竜→勝呂竜士/廉→志摩廉造)
『りゅ、竜……?』
これは、どういう事だろうか。
ついさっきまで、ウチは竜に廉と勉強を教わってて、それで、
どうしてこうなったのだろう。
「…、…なまえ」
『ん』
「大丈夫か?」
現在の状況。
仰向けの竜と、うつ伏せのウチ。
下に竜がいて、その上にウチがいる。
竜の筋肉質な胸板が頬にぴとりとくっついて、ぽかんとしてしまっていた。
ウチの頭を竜が手でがっちりと押さえ付けているから、動けないし。
『竜…もう大丈夫やから』
「……あぁ」
『……りゅ、う』
自室の本棚の高い位置の参考書を取ろうとした時だ。
ふっと目の前に現れた小鬼に驚いて体制を崩したウチを受けとめてくれた竜。
まあそのまま倒れてこの状態なのだけれど。
『はよ…廉、来るに?』
「分かってる…」
『竜の心臓…むっちゃ早い、けど』
「っ、煩いわ……!!」
『…あった、かいな』
離れなきゃという意志に反して、その温もりがとても愛惜しい。
すりすりと身を寄せると、竜は腕を背と腰に回し、更に強く、抱き寄せた。
あー、ヤバイ。気持ち良くて寝てきそう。
「なまえ…俺……」
『なんや…?』
「………」
ウチの位置に顔を向けると竜が見下ろす形になるので、それに習ってウチも見上げる風に首を動かした。
と、視線が一瞬合って、また逸らされた。
(…上目遣い、とか…可愛いすぎやろ)
『、つ…っ!…りゅ、竜…苦しい、』
急に強まった力に戸惑ってそう告げると、すまんと謝って力を緩めた。
離す気はないらしい。
『ほんまにあかんって、廉近くのコンビニ行っただけやし、』
「ただいま………ん?」
噂をすれば。
明るい髪色と性格を主張しながら廉が帰ってきた。
片手にはコンビニ袋。
ウチと竜にジャンケンで負けた廉が買い出しに行って来たアイスだ。
「…お、」
『れ、廉、誤解せんといて?これはウチがちょっと』
「お邪魔しましたー!!」
『い、言ったそばから!?』
どたどたと走り去った廉に溜め息を吐いて、もう一度竜を見上げる。
吊り上がった目の裏が、優しい事をウチは知ってる。
自重を全て竜に預け、そっと寄り掛かった。
「な、なまえっ!!?」
『アイス溶ける前に離しーや?』
彼が腕の力と鼓動を早めた事を肯定と取り、ウチは瞼を閉じた。
(強がりでいつも不機嫌で)
(本当は優しいキミ)
(それがウチの居場所)