短文
□■僕らは戦った、
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『―――――状況が理解できない』
「3秒以内に察しろ。じゃねえとお前を犯す」
『“犯す”じゃねえ、いいからででけこの刺青野郎!!!!!』
朝目が覚めたら、ジェラールさんに馬乗りにされてました。
逃げられないこの状況へと質問をすればそんな回答をされたので、腹が立って手が出てしまった事は反省しよう。
グシャッ!!とすさまじい音を立て、ジェラールは壁の方へ吹っ飛んだ。
「…オイ、今グシャっていったんだけど」
『人体からする音じゃないイコール貴方はノット人類』
「いい加減にしろ、啼かすぞ」
『おまえがな?朝から盛り過ぎだ』
言葉ではぶっきらぼうでも、朝イチで彼の顔を見れた事は少し嬉しく思う。
ああどうしてなんだ。
どうしてあたしはこんな変態に惚れてしまったのだろう。
「…まあ、冗談はこの辺にするか」
(ホラ、また冗談にする)
楽園の塔…Rシステムを完成させる為の道具でしかないあたしを前にしてからかっているだけなんだ。
どうせ使い捨て。
なら今のこの瞬間を楽しませてください。
『今日は何ですか?また塔の微調整とか、』
「好きだ、なまえ」
『…………………………………え?』
思わず耳を疑った。
今なんて?そう聞き返せば、珍しく、というか初めて見る彼の赤面顔。
“何度も言わせるな”と目をそらして、無駄に艶っぽく息を吐いた。
『え、あ、あの、ジェラール、さん…?』
「さんはやめろ、後、敬語も……それはあんまりだったか」
『否定しないけどムカツク』
思わず彼の顔を睨むと、目が合う。
二人とも一瞬で逸らしたけど、顔が熱くなってきた。
「笑ってる顔」
『え?』
「怒ってる顔も、一生懸命なトコも、全部好きだ」
『、あ……っ』
「でも、なまえが他の男に向けてる笑顔と泣き顔だけは…好きになれない」
『ちょ、あの、えっと、』
パジャマ姿のままのあたしに近づき、ベッドに乗る。
一気に近づいた距離に息を呑むと、腰に手を回されて、がっちりと固定された。
あたしが大嫌いな束縛、拘束なのに。
不思議と嫌じゃ、なかった。
「もう一回だけ、言うぞ」
『……何回も、』
「好きだ…愛してる、なまえ」
『言わないで…っ』
意思の弱いあたしの気持ちは、簡単に零れてしまうから。
それ以上言ったら、止まれなくなりそうで。
「…なまえは?」
『ふ、う……ん、』
息を吐いてから話そうとしたら、そのまま唇を奪われる。
舌がゆっくりと、怯えながら口内を舐めてくる。
呼吸がうまく出来なくなって、苦しくて。
あ、鼻ですればいいのかとようやく気付いた頃に解放された。
キスのような甘さはないけど、酸素がおいしい。
『…す、き…らよ』
「だろうな。それ以外の返事だったら殺すとこだった」
『うる、しぇ……ばか……』
「呂律回ってないぞ。誘ってんのか?」
違うと首を振って否定したのに、
あたしは緩やかに仰向けに倒された。
朝、起きた時と同じ。
「しばらく動けなくなっても、文句言うなよ」
『んー…それはれきらいそーだんれすね…』
そんな彼が、好きだ。
おはよう、僕の存在理由。
(昨日までも、今日も、明日も)
(存在理由はただ一つ 、)
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(お題:xxx-titles様より)