短文

□最後の最期
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少し離れた所で僕を見ている彼女を、渾身の力で睨みつけた。

立っているのがやっとという状態の僕など怖くないようで、なまえは笑顔のまま近づいてくる。





『ね、わかったでしょ。レオのやってる事、無意味だって』

「うる、さい…アリエスを……」


『そんな話、ツマラナイよ』





ついに僕の目と鼻の先まで来たなまえは、その華奢な腕でいとも簡単に僕を押し倒し、馬乗りにした。

抵抗する力などなく、なされるままにされていた僕はまだ言葉だけで抗えるようだった。





「離せ……」

『何を?今のレオを?それとも黄道十二門の鍵を二つも?』





何故僕はこんな奴を所有者に選んだのか、今でも後悔出来た。

いや、最初はこうじゃなかった。

あんなにも無邪気で優しかったなまえを壊したのは、僕だ。 


すっと白く透き通った腕を伸ばして、なまえは僕の胸に触れる。





『レオの心臓…“まだ生きたいよ”って言ってるよ?』

「…なまえ……」

『あれ?でも星霊って…死なないんだよ…ね?』





そう言いながら、語尾で強く僕の心臓を鷲掴みにした。

身体の全身を、痛みが走る。

声にならない声を上げて身体をよじると、彼女はにぱっと嬉しそうに、





『よかったあ。痛いって事は、まだ生きてるんだね』





口角を吊り上げてそう言った。

まるで、大事にしていた玩具の安否を確かめるように。





『あのね、レオ…二体同時開門を使えるようになった私に、今のレオは無意味な行動をし続けてるんだよ』

「でも…君は、僕を…呼び出す事が、出来…な、……」

『うん…そうだね。でも、今となってはそれは大した問題じゃないんだ』





私に逆らってるのが、気に食わないの。


そう言い放つと、掴んでいた僕の心臓に抉るよう爪を立てる。

痛みじゃ言い表せない苦痛。

こうなったのは、僕のせいで。





『……いいよ、レオの条件呑んであげる』

「…、!?」

『でもねでもね、黄道十二門が二つ消える…それは私にメリットなんてないでしょう?だから、』





小さなリップ音を立てて、キスをされる。

なまえだけが出来る、口移しでの魔力回復。

霞んでいた目の前が少しハッキリしてきた。





『私を、貴方のモノにして?』

「!?」

『それから最後に私を、殺して』





僕の頬に手を滑らせ、触れたまま自らの衣服を肌蹴させる。





『貴方は恋人を殺したという自負を背負って、生きていきなさい』





彼女はあまりにも残酷な事を言った。

その言葉を遮るように、僕はなまえへ深く口付けていった。








(忘れないで)

(彼女は十字架へと姿を変え)

(僕の未来に重く圧し掛かった)



1100509

→あとがきいるよね

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