短文

□何度でも、巡り、
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なまえが死んで、半年が経った。

二日に一回は顔を見せて、花も取り替えていた。





「今日、まーたナツとエルザが闘ったんだ。ナツも惜しかったけど、やっぱエルザは強ぇよ」





いつものように、ギルドでの事を話して。

少しでも寂しくないように。





「そういやさ、俺、お前と一回も勝負した事なかったわ。俺が逝ったら、ソッチで一回、勝負しようぜ」





きっと、なまえが勝つだろうけど。

俺は絶対にあの強さには敵わないさ。





『―――――――――――あの!!』





背後で誰かが叫んだ。

あまりにデカイ声だったから、俺は興味本位でそちらを振り返った。

声の主は俺のすぐ後ろにいた。

…俺を呼んだのか?





『…さっき、うちの店で千日紅を買った方ですよね?』





時期が時期なので、もうあの丘には形のいい千日紅は咲いていなかった。

だから、最近は街の花屋で花を購入していた。

墓の前に座ってる俺からは声の主である女の顔までは見えなかったが、着ている店のエプロンが花を買った店のと一致していた。





「あァ…そうだけど」

『多分、一輪足りなかったと思って…』

「あー…わざわざ悪かっ、た…………、っ!?」





ここでようやく顔を上げて、女の顔を見た。

丁寧に結った色素の薄い髪、優しくて暖かい、笑顔。

一瞬、自分の目を疑った。





「……なまえ…!?」

『え?どうしてあたしの名前、ふぎゃっ!?』





思わず抱き締めずにはいられなかった。

なんてこった、花の香りがするところまで同じじゃねーか。





『う、ちょ、…離せっての!!!!』

「う、がっ!?」

『あっ!……あ、謝らないわよ!!アンタがいきなり、…』





腹にキツイのをお見舞いされた。

容姿はそっくりで名前も同じだが、やはり彼女は俺の知っているなまえではないらしい。

まぁ、当然か。

なまえはもう死んでしまったのだから。

よくよく見ると、目の色が違うし、口調も少しお転婆な感じだ。





「わ、悪い…その、知り合いに似てて……」

『……しんじゃった恋人に?』

「!!!」

『墓石の名前があたしと一緒。それに、千日紅買う人って大体恋人に向けてだから』





そう言って笑った…なまえは、何処までも死んだなまえにそっくりだった。





『あんまりいい気分じゃない…とは言えないかな。愛されてる人の代わりって幸せかもね』

「その、悪かった…」

『構わないわよ?これからもうちのお店をどうぞ御贔屓にね』





頭を下げて、歩くその他愛無い仕草も、なまえを思わせた。

思ったより俺はアイツに依存してたのかもしれない。





「………あのさ!!」

『…何?』

「俺の自己満足になっちまうけどよ…お前の事、恋人の生まれ変わりだとか馬鹿げた事思ってもいいか!?」

『…!!』





驚いたように目を見開いて、数回瞬きを繰り返したなまえは、終には溜息を吐いた。

ゆっくりと俺に近づいて、また、笑った。





『……ずっと前から貴方の事見てた』

「…え?」

『うちの花屋によくスノーフレークや千日紅を買いに来るから、きっと恋人がいるんだなーって』





言ってる意味が、よく分からなかった。

でも、なまえはどこか寂しそうな目をしていた。





『貴方の事をいつの間にか好きになってたわ』

「なまえ……」

『代わりでもなんでもいい…あたしは貴方の傍にいたい』





こんなにも純粋に俺を思っているなまえの事を、俺は恋人の代わりとしか見られないなんて。

なんて酷い奴なんだと自分を呪った。











(彼女の代わりで構わない)

(そういったアイツは目を細め笑いながら、)

(涙を流した)



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